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東京都地域公益活動推進協議会

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様々な福祉ニーズを抱える方への「フィッティングサポート」 ~人としての尊厳を守る~

社会福祉法人聖ヨハネ会 高齢福祉部門

介護保険サービスはサービス提供条件が介護報酬と連動し、厳格に細かく定型化されています。一方で認知症などがある方は、失見当や帰宅願望などがあり潜在的ニーズが非定型で、定型化されたサービスの適用が馴染まないことが多くあります。

そのため、たとえばデイサービスで長時間の利用が困難な方には「滞在時間の短縮」「単独送迎」「参加できるサービスを創ってもらう」など個別ニーズにサービスをフィットさせるための工夫や調整が必要となってきます。

ニーズにサービスをフィットさせるためには保険外対応などが求められ、ここにサービス・フィッティングコストが発生しますが、社会福祉法人がここに取り組まないと、本来福祉を必要とする方がサービス利用に繋がらないという事態も発生することになります。

制度や施策等に基づく公的サービスの枠組みや、営利的サービス提供方法などのサービス利用ラインに乗らないケースの福祉ニーズに対し、人としての尊厳が守られた生活が営めるよう、個別のニーズにサービスが適合できるよう信頼関係の構築とサービス・フィッティングを行う福祉サポートを『フィッティングサポート』(以下「FS」と略す。)と定義しました。

平成30年9月11日開催 実践発表会(前期)高齢分野 発表
掲載日:平成30年9月20日

(事例1)サービス拒否でごみ屋敷の一人暮らし高齢者への支援

(1)きっかけ

本事例は、当法人の配食サービス以外はサービス拒否があった独居高齢者の事例です。認知機能の低下により自宅がごみ屋敷となり、糞尿を近隣に投棄するなどの行為に及び、ボヤなども発生させたことで、近隣の保育所・住民から苦情が出ました。そこで、市担当者や地域包括支援センター職員、民生委員などが介入し、助言や必要な支援を提供するように努めましたが、ご本人は聞き入れず次第に体調を悪化させてしまいました。唯一、配食サービス(市単独事業)の委託を受けている聖ヨハネ会へは、食事の提供で感謝されていましたので、私たちはこの信頼関係をベースに介護サービスを導入する方針を立て、介入の計画を立案しました。

【清掃前】

(2)チーム形成

本事例を支援するため、法人内は2か所の高齢者在宅サービスセンターと特養の3機関が、法人外は市の介護福祉課包括支援係・高齢福祉係・ゴミ対策課・地域包括支援センターの4機関の計7機関(係)で支援チームを形成し、関わることにしました。

(3)取り組みのながれ

支援チームによる取り組みの流れは以下の通りです。

1)ご本人との面談⇒現状把握⇒信頼関係構築

まずは、聖ヨハネ会の配食担当者らがご本人と面談をおこない現状把握を行いました。ご自宅へ足繁く訪問をおこない、生活実態の把握に努めるとともに、何より信頼関係の基礎を築くよう努力しました。

2)関係機関との情報共有、課題の共通認識にもとづく支援プラン立案

次に支援チームをつくり、チームメンバーと情報を共有し、そのうえで課題の確認と支援プランづくりを行いました。

3)ご本人に支援方針、支援計画を説明し、同意を得る。

立案した支援方針と支援計画をご本人に説明しました。それまではどのような提案も拒否してきたご本人でしたが、信頼関係がほぼ築けていたので、荒れ放題となっていた自宅の一斉清掃について首肯していただくことができました。

4)FSの表明と職場内有志の募集

介護保険制度の活用に至らず、また、介護保険制度では対応が困難な本事例に対して、当会はFSとして支援することを部門内で表明し、一斉清掃のボランティア協力を募りました。

5)サービスの調整と一斉清掃の実施

当日一斉清掃が滞りなく実施できるようご本人にはショートステイをご利用いただき、その間にボランティアの清掃チームが片付けに集中できるよう環境を整え、一斉清掃を実施しました。

【清掃後】

(4)取り組みのポイント

1)公的相談窓口が抱える地域の福祉ニーズの課題を社会福祉法人が共有

公的相談窓口がかかえていたゴミ屋敷問題に対して、社会福祉法人が地域公益活動の実践の一環として、具体的かつ実行可能なアプローチとしてご本人とコンタクトをとる窓口役と具体的支援を展開する介入役の両方をFSとして担い、実行したことでそれまでなかなか動き出しが難しかった関係機関が連携して動き出し、課題解決の第一歩を踏み出すことができました。

2)食の自立支援事業(受託事業)を糸口としたこと

介護保険サービスに対する拒否があり介入が難しい状況にあった本事例に、支援チームが介入を試みる窓口役を担ったのは配食サービスの部門でした。この配食サービスは、食の自立支援事業(受託事業)の一環で夕食のお弁当配達を行っていますが、その特色は「暮らしを守るサービスの連携拠点」として機能している点にあります。お弁当は手渡しが原則ですので、配達員はご利用者に異変があった場合に、察知することが出来ます。その場合、配達員は食の自立支援事業のコーディネーターに状況を報告することになっています。報告を受けたコーディネーターは、ご利用者様の緊急度に応じて対応しますが、基本は当該ご利用者様の担当である地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に状況を伝え、その後のフォローアップを依頼します。配食サービスだけは気に入って利用されていた本事例は、配達員やコーディネーターとの日頃の信頼関係が概ねできていたので介入の糸口として活用することができたと思います。

3)サービスや事業の枠を超えて協働する人材を募りゴミ屋敷清掃にあたったこと

FSは制度やサービスの隙間を埋める支援とも言えますが、今回のゴミ屋敷ケースの解決に際しては、既述の通り公的機関を含む7つの機関(係)が関わってくれました。特に、行政は一般的に縦割り傾向が強いと言われますので、庁内連携も勢い難しいと考えられましたが、今回は利用者支援のために社会福祉法人とともに一致し、連携に努めてくださいました。また、ゴミ屋敷清掃は莫大なゴミ量と家屋の老朽化や汚染状況から、片付けには人海戦術を取る必要がありましたが、本会高齢福祉部門においてゴミ屋敷清掃をFSとして取り組むことを宣言し、有志を募ったところ、多数の協力を得ることができました。FSは理念を具現化するためのキーワードとして活用したいと考えておりましたが、職員がボランティアとして本事例に関わってくれたことで本会理念に触れ、その意義や意味を良く知る良い機会となったと振り返ります。

(5)本事例におけるFSの取り組み成果

1)FSを社会福祉法人が実施することで、行政・包括支援センターなど地域福祉の総合相談窓口から地域公益活動の拠点としての評価を受け、信頼を獲得し、連携のパイプを強化しました。

2)介護保険サービスでは解決しえない様々な課題を抱える高齢者の尊厳ある暮らしを守り、地域の福祉ニーズ(公衆衛生、防災など)を充足しました。

3)FSの社会貢献姿勢に共感し、協働してくれる人材を法人内外で募り、縦割りの制度・サービスでは解決しえない地域の福祉ニーズを充足するところまで関わってもらい、問題解決に繋げました。

(事例2)ターミナル期の妻・認知症の夫という複合的な課題を抱える家族支援

(1)きっかけ

本事例は、がん末期のターミナル期に入った奥様と、進行の早い認知症のご主人様という複合的な課題を抱えていたご家族への支援になります。

高齢のご夫婦双方に高齢福祉だけでなく医療をも連動した支援が必要なケースでありました。

(2)法人内外での協力

本事例を支援するため、法人内は高齢者在宅サービスセンター、特養、病院ホスピス、地域包括支援センター、ケアマネージャーが連携し、法人外は市の介護福祉課や他法人の急性期基幹病院にもご協力いただき、法人と行政、他法人の医療機関が情報を共有して連携し支援しました。

(3)取り組みの流れ・ポイント

今回の事例も、配食サービス職員の発見がきっかけとなり、がんの症状で具合の悪い奥様の状況を察知しました。そして奥様の様子から病院への受診と治療が必要と思われるが、認知症状が出始めたご主人様のことが気になり受診出来ていないとの状況を把握しました。

そこで、ご主人様に特養の緊急ショートスティを利用していただき、奥様には病院を受診していただき入院加療が開始されました。奥様は2週間程度の入院となりましたが、その後の在宅生活も体調不調で横になることが多いと予測され、ご主人様の緊急ショートスティ期間中に、自宅から近い高齢者在宅サービスセンターへ見学・体験を行政のご理解のもと連日実施しました。これは、緊急ショートスティ終了後に、速やかにご主人様の認知症デイサービスを開始するために、職員と顔見知りになるという点で必然的なサポートでありました。このデイサービスは、介護報酬請求もできず費用もかかる支援でありましたが、ご家族の総合的な支援が必要であったためFSを実施しました。
奥様の退院後は、計画通りスムーズな家族支援に繋げることができたと思います。その後の経過は、ご家族から希望があり、またよりご家族の支援がつながるように、奥様は他法人の病院から聖ヨハネ会のホスピスへ転院され、ご主人様は、聖ヨハネ会のデイサービスやショートスティを利用しながらできる限り、ホスピスにお見舞いに通うことが出来ました。

このような経過を経て奥様は穏やかに最期をおむかえになり、ご主人様はその後遠方のご家族の近くの有料ホームに入居されました。

 

まとめ

本事例の経過と取組み成果からFSの有効性についてまとめると…

(1)FSは、制度の狭間からこぼれ落ちてしまいがちな“非定型的”で“多様性のある”個別の福祉ニーズを持つケースが“人としての尊厳を守り地域で暮らし続けるための方法”として有効と考えられます。

(2)FSは、地域において福祉の発展・充実を使命とする社会福祉法人が、その社会的責任を果たすために“法人の理念をひとり一人の職員が行動できるレベルにまで落とし込むためのキーワード”として有効と考えられます。

(3)今後は職員個人だけではなく、組織力として継続的に実施し、組織全体で動くことの理解を促進していきたいと考えます。