社会福祉法人の使命に基づき、地域における福祉課題の解決に向けて、3層による地域公益活動を推進します。

東京都地域公益活動推進協議会

ホーム > 各法人の取組み事例の紹介 > 「おおたこども民生委員」の取り組み

このページをプリントします

「おおたこども民生委員」の取り組み

社会福祉法人大洋社

「子どものいる世帯で気になることがあっても、関わるのが難しい」という声をもとに、子どもと民生委員をつなぐ仕組み「おおたこども民生委員」の取組みを紹介します。

令和元年10月2日開催「社会福祉法人の地域における公益的な取組み実践発表会」において発表いただいた内容を編集しました。
発表者:社会福祉法人大洋社 大田区立ひまわり苑 常務理事・統括施設長 斎藤弘美氏

大洋社の沿革と地域連携公益事業「れいんぼう」

社会福祉法人大洋社は、大正11年に創設者が女子および母子の自立を応援したいという思いから事業をスタートした法人です。現在は、大田区に本部を置き、母子事業と保育園事業を行っています。職員150名という小規模の法人ではありますが、公益的取り組みは、寄付や助成金を募りながら、アイディアとやる気と皆の協力で行っています。
母子事業部では、大田区立ひまわり苑を運営しています。指定管理の母子生活支援施設で、緊急一時保護事業と子育て支援事業を行っています。これまでの地域における公益的取り組みとして、地域に住むひとり親への支援を行ってきました。その一つが大田区社会福祉協議会「おおたスマイルプロジェクト」の地域連携公益事業「れいんぼう」です。
れいんぼうは、対象年齢別に3つに分かれています。ひとり親の小学生から中学生までの子どもを対象とした「Kidsれいんぼう」、ひとり親の15歳から39歳までを対象とした「JOYれいんぼう」、ひとり親の母親を対象とした「ママれいんぼう」です。子ども、若者、ひとり親が生きる力を身につけるための体験型プログラムを行っています。また、高齢者の就労支援として保育補助養成講座なども行ってきました。

 

大田区の現状

地域共生社会をイメージして、昨年度より開始した大田こども民生委員は、「Kidsれいんぼう」「JOYれいんぼう」に参加している子どもたちを対象にしています。ひまわり苑のある大田区は人口73万人で、高齢化率は22.7%です。約半数が単身世帯となっています。大田区は、かつての大森地区と蒲田地区が一つとなり、地域の名前を一文字ずつ取って大田区となりました。空港、町工場エリアがある一方で、田園調布などの住宅街エリアもあり、異なる個性を合わせ持っています。
大田区の子どもや地域福祉に関する会議では、これまでの施策の利用量を参考にしたり、アンケートなどで課題や傾向を確認したりしながら、新しい施策を作っています。昨今では、最も気になるのが子どもの貧困や引きこもり、児童虐待などです。そうした子どもたちの数は、ニーズの調査だけでは見えてきません。ひるがえって、地域の課題は、数字からは見えてこない孤立しやすい人たちにあるのではないか、子どもだけではなく障がい者や高齢者も同様にさまざまな課題を抱えているのではないか、と私たちは考えました。一方で、地域で自治会や民生委員のなり手が減っており、このままでは地域共生社会の実現にも疑問符がついてしまうという現状がありました。

 

おおたこども民生委員の誕生

開始までの準備

そうした中で、おおたこども民生委員をスタートするきっかけとなったのは、民生委員からの相談です。「子どものいる世帯で気になることがあっても、関わるのが難しい」「近所で子どもを虐待しているケースがあって、ひまわり苑につなぎたい。でも、どうしたらいいかわからない」など、さまざまな声を聞き、子どもと民生委員をつなぐ仕組みがあったらいいのではないかと考えたのです。そこで、思いついたのが子どもたちに民生委員を体験してもらうことでした。
子どもたちにも、支援を受けるだけではなく、他者の課題に気づき、できることをする、さらには助け・助けられるという体験を民生委員の活動から学んでほしいと考えました。それが将来の広がりにつながるはずだからです。
こうした取り組みを行うときには、まず身近なところに理解者を作ることが大切です。まだアイディアの段階で、職員に話を聞いてもらい、関係各所と協働できる可能性を探りながら、準備、計画を練っていきました。また、社会福祉協議会には、民生委員につないでもらえるように頼みました。
そして、準備段階の話し合いで、民生委員から話を聞きました。日頃は、「民生委員です」と声をかけると、「間に合っています」と言うような人であっても、災害時になると、「誰とも話ができず、一人で恐かった」と言って、話があふれ出すこともあり、関わり方が難しいと思える人でも、関わりを続けていくことは、とても重要だという話でした。

 

おおたこども民生委員のプログラム

では、おおたこども民生委員の活動を紹介します。
【プログラム1】では、福祉と民生委員の活動について、子どもたちに伝えるために、パワーポイントを使って解説するとともに、民生委員から聞いた話を私たちが劇で披露しました。【プログラム2】では、子どもたちが高齢者施設を訪問して、「お年寄りを理解する」「介護施設見学・体験」というプログラムを実行しました。施設利用者に踊りを披露するなど交流をはかり、最後にはメッセージカードも渡しました。【プログラム3】では、民生委員が毎年行っている「歳末たすけあい募金」の活動を手伝いました。
最後の【プログラム4】では、民生委員の方々に、一緒に活動させてもらった感謝の言葉とともに、「また来年もよろしくお願いします」という思いを込めてメッセージカードを渡しました。行政や社協にも協力してもらい、委嘱式も行いました。

 

活動を振り返って

2019年度の活動内容

2018年度の活動を振り返り、もう少し広がりを持ちたいと考え、2019年度は参加者対象年齢の幅を広げ、対象エリアも増やしました。初めは、自分が人の役に立てるとは思わなかったけれど、プログラムに参加して、行った先でとても喜ばれ、それだけでも自分には存在価値があると気づけた、という子どももいました。
子どもたちは、ミンジーバッジをつけることで、こども民生委員の活動へとギアチェンジができたようでした。民生委員も、このバッジをつけて活動をしてくれています。今年は、子ども用の民生委員用ミンジージャケットを作ってくれるそうです。また、他エリアの民生委員からの見学も増え、私たちの仕事の視点も変わりました。

 

大事にしたいこと

大事にしたいこと

民生委員の活動は、難しい部分もありますが、日頃から未来につながる入口を作りたいと思っていました。こうした取り組みから、大事にしたいと思ったことがあります。一つは、何かをやってあげるという一方通行の関係には限界があり、子ども、高齢者、障がい者も、皆が少しずつやれることをやれば良いのではないか、ということです。二つ目は、日々の小さな気づきを大事にすることです。
この取り組みを通して、子どもたちも「あの時、あそこにいた人だな」など、民生委員の存在に気づき、今では挨拶をかわす関係になっています。しかし、教育機関や教育委員会から民生委員には情報が下りて来ないため、関わりが必要な子どもたちの情報を把握することは難しいのが現状です。協力者を広げていくことが今後の課題です。

 

地域で顔の見える関係作りを

最後に、私の子どもの時代の話をしたいと思います。私は、小さな頃から祖母が始めた母子寮の仕事を手伝ってきました。施設を利用する子どもたちやお母さん、地域の人たちも、私の面倒を見てくれました。学校の帰りには、自治会長さんの家によく行っていました。話を聞いてもらったり、おやつをもらったりしました。私の周りには、自然に子どもたちの見守りをしてくれる大人がいたのです。困ったことがあれば、助けてくれる兄弟や友だちもいました。
今の時代、子どもたちの周りに、そうした人たちがどれぐらいいるでしょうか。地域によっては、かなり減っているかもしれません。今後は、地域で顔の見える関係を作りながら、社会福祉法人として、新たな地域づくりをお手伝いできる取り組みを広げていきたいと考えています。

 

<法人紹介>

社会福祉法人大洋社

大正11年、教員であった創設者が、女子および母子家庭の自立を応援したいという思いから、「内職婦人同盟」「相談」の事業からスタートした。開設以来、子どもへの母の愛の必要性を説き、「世界はひろし母の愛」という言葉を法人の根幹とする。弱い立場に陥りがちな女性や母親、将来を担う子どもたちの今を守り、すべての人の幸せを願い、事業を運営している。その後、財団法人日の丸厚生会として活動し、昭和27年に社会福祉法人大洋社となる。現在は、東京都大田区に本部を置き、母子事業部、保育園事業部の2事業部制で10事業を行っている。これまの事業ノウハウを活用し、大田区社会福祉協議会「おおたスマイルプロジェクト」の地域連携公益事業「れいんぼう」などに取り組んでいる。