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東京都地域公益活動推進協議会

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児童虐待防止推進月間事業「0歳からの親子コンサート」

社会福祉法人至誠学舎立川(立川市)

コンサートの様子

子育て中のお母さんやお父さんの子育て家庭の孤立を防ぎたいという思いで開催している「0歳からの親子コンサール」をご紹介します。演奏中でも子どもが泣いても歩き回っても大丈夫というコンサートです。

令和2年9月18日掲載

令和元年10月2日開催「社会福祉法人の地域における公益的な取組み 実践発表会」において発表いただいた内容を編集しました。
発表者:社会福祉法人至誠学舎立川 児童事業本部 児童養護施設至誠大地の家
施設長 石田 昌久 氏

 

至誠学舎立川の沿革

至誠学舎立川は、明治45年に創設者が身寄りのない少年を自宅に引き取り、家業の製菓を教えながら訓育指導・更生を行うという取り組みから始まり、少年保護事業に力を尽くしてきました。戦災で池袋本舎が消失したことから、立川市に拠点を移します。そして戦後、社会福祉法人の認可を受け、現在に至っています。
「まことの心の働きは、人の心を動かし天に通ず」という法人理念のもと、現在は、児童・保育・高齢という3つの事業本部制のもとで、さまざまな事業を展開しており、52事業所で約1,300人が働いています。
立川市に拠点を移して以来、長い歴史の中で、地域とのつながりが深く、法人として多くの地域公益事業に取り組んでいます。その一つとして、現在、児童養護施設と障がい者福祉サービス事業を行っている児童事業本部が「0歳からの親子コンサート」を主催しています。

 

0歳からの親子コンサート

コンサートチラシ

「0歳からの親子コンサート」は、演奏中に子どもが泣いても歩き回っても大丈夫というコンサートです。この取り組みは、2004年11月に、児童虐待防止推進月間が制定されたことから、同年11月より児童事業本部が虐待防止の啓発活動として、立川市や立川市内の関係機関、諸団体の協力で、児童虐待防止推進月間事業と銘打ち、地域に向けて、有識者による講演会やシンポジウムを開催したことに端を発しています。
その活動が11周年を迎えた節目の2016年に、企画・実施したのが「0歳からの親子コンサート」です。もっと子育て中のお母さんやお父さん、それから孫育て中のおじいさんやおばあさんが望むもので、地域とのつながりや、人とのつながりをより感じられる取り組みをしたいと考えたからです。児童虐待は、子育て世代、子育て家庭の孤立が要因の一つといわれています。コンサートに出かけてもらうことで、子育て世代、子育て家庭の孤立を防ぎたいという思いを込めました。 コンサートは、第1回から、シンガーソングライター・玉城(たまき)ちはるさんの歌とトーク、ピアニスト・高橋教予(のりよ)さんの演奏という構成です。このお二人あってのコンサートだと実感しています。2019年度で第4回目を迎えます。2015年度からは、立川市社会福祉協議会の地域福祉コーディネーターが企画運営に参画していただいている他、立川市子ども家庭支援センターなどさまざまな機関、団体の協力のもとで実施されています。コンサート会場は、立川市の市民会館です。当日の会場準備や受付、進行は児童事業本部の職員と社協のスタッフが行っています。会場にはベビーカー置場や授乳室、お茶が飲めるカフェコーナーを設置し、参加者が安心してコンサートを楽しめる工夫をしています。

 

玉城さん、高橋さんとの出会い

コンサートの様子

ピアニストの高橋教予さんとの出会いは2013年です。東日本大震災の支援にNGOの団体と一緒に高橋さんが来園されました。その後、お知り合いのアーティストと共に至誠学園の子ども達のためにコンサートを開いて下さっていました。児童虐待防止推進月間事業で、当事者に直接届けることのできる企画を新たに考えていたちょうどその頃に、高橋さんとシンガーソングライターの玉城ちはるさんがご一緒に来園される機会がありました。この企画をお話ししたところ、お二人は快く賛同してくださり、玉城さんと高橋さんのコンビで行うコンサートの企画が進みました。

 

一緒に歌って、踊れる

演奏が始まったばかりの頃は、子どもたちもまだ少し遠慮して、通路に出てくる人数はわずかですが、徐々にその人数が増えていきます。そして、玉城さんが「舞台で一緒に歌おう」と、声をかけると、あっと言う間に子どもたちは舞台に上がっていきます。 
玉城さんのリードが素晴らしく、子どもたちが一緒になって歌ったり踊ったりして、瞬く間に子どもたちがコンサートの主役になっていきます。舞台に上がる子がいる一方で、舞台の下で動き回ったり、大声で泣き出したりする子もいますが、それを制止する大人は誰一人いません。親御さんたちが安心して一緒にコンサートを楽しんでいる姿も印象的です。そうした中で、楽しく進行していきます。
実は、玉城さんのプロフィールを見ると、かなりご自身も、ご家族の関係でつらい思いをされたことがあるようです。また、ホストマザーとして海外の留学生を受け入れていらっしゃるのですが、この留学生の中には、いろいろな境遇や、難しい状況の学生もいるそうです。そういった経験をお持ちの玉城さんだからこそ、心からの優しい言葉がけができるのでしょう。そして、さらに、歌に合わせた高橋さんのピアノが涙を誘います。そういう雰囲気が、温かい幸せな時間をつくりだしているのだと感じております。

 

読み聞かせやワークも

また、読み聞かせの時間もあります。子どもたちは玉城さんの読み聞かせに集中して、楽しく過ごします。さらには、玉城さんの声かけで、お母さんたちも舞台に上がり、「やさしさ貯金ゲーム」というワークも行っています。会場を出られる時の皆さんの表情が、和やかになっているのが印象的です。1時間余りの短い時間ですが、参加したお子さんたちや親御さんに心安らぐ時間を提供できているのではないかと感じています。立川市の社会福祉協議会の参画、ご協力もあって、児童虐待防止への理解、共感が広がり、取り組みに賛同していただける団体が増えてきたことも、うれしく思います。
2018年度は、129件の参加がありました。年々参加者が増えていますが、会場が大きすぎても、コンサートの「手作り感」という魅力が伝わらないと感じており、会場の選定には頭を悩ませています。

 

子育てに悩む親が救われることを願う

このコンサートを経験した人たちが、たくさんの人に出会い、たくさんの人とつながり、コンサート会場で感じた空気や雰囲気が地域社会に広がることで、子育てに悩む親や子どもたちが救われ、結果的に児童虐待の防止につながれば、こんなにうれしいことはありません。今後も、「0歳からの親子コンサート」を続け、多くの人に参加していただきたいと思います。


<法人紹介>

社会福祉法人至誠学舎立川

社会福祉法人としての源流は、明治45年にさかのぼる。創設者が東京神田岩本町において、身寄りのない少年を製菓業を営む自宅に引き取り、仕事を教えつつ、訓育指導、更生の活動を始める。大正14年、少年法の制定により、少年保護団体の認可を受け、団体名を「至誠学舎」と命名。昭和20年、戦災により本舎を立川に移す。昭和27年、社会福祉法人に組織変更。現在は、児童福祉、保育、障害、高齢福祉の分野で事業を展開し、児童養護施設、障がい者福祉施設、保育園、特別養護老人ホームなどを運営。地域公益活動として、2016年より「0歳からの親子コンサート」を開催している。