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東京都地域公益活動推進協議会

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コロナ禍の「みんなのカフェ メリ・メロ」の取り組み

社会福祉法人松栄福祉会(羽村市)

テーブルを囲み、利用者やスタッフが食事をしている様子

地域の空き店舗を利用し、保育士、看護師、管理栄養士等とボランティアスタッフで「みんなのカフェ メリ・メロ」を運営しています。車椅子の方、高齢者、赤ちゃん、妊婦さんなど、多くの方が安心して利用しています。コロナ禍では、テイクアウト方式に切り替え、管理栄養士監修のお弁当販売に取り組みました。

令和2年10月2日掲載

空き店舗を利用した「みんなのカフェ メリ・メロ」

「みんなのカフェ メリ・メロ」は、地域の空き店舗を利用し、平成30年5月にオープンしました。今年で3年目になります。保育士、看護師、介護士、管理栄養士とボンティアスタッフが交代で勤務しています。厨房管理及び金銭管理は、地元の管理栄養士2名に業務委託しています。また、店内では、地域住民の手づくりの品の委託販売や指定就労支援事業所のクッキー販売も行っています。

店内設計は、関わるスタッフがそれぞれの立場から、さまざまな意見を出し合いながら考えました。車椅子の方、高齢者、赤ちゃん、妊婦さんなど、多くの方に安心して使っていただけます。

 

コロナ禍前のカフェの取り組み

コロナ禍前は、営業時間が10時から16時、客席数が靴を脱いでくつろげる小上がり16席、車椅子で使用できるカウンター3席、屋外テラス8席でした。客層は、小さなお子様連れの母親が5割、高齢者が4割、主にランチタイムに来店するビジネスマンやOLが1割です。また、イベントとして、保育士によるお話会、誕生会、手遊びの会、ベビーマッサージ、管理栄養士による栄養講座などを開催し、そのほかに地域高齢者団体の活動の場としても提供していました。

 

コロナ禍後に活動を変更した理由

羽村市では、令和2年3月より小・中学校が休校となり、幼稚園・保育園も登園自粛が始まりました。店内飲食による新型コロナウイルスの感染拡大を避けるため、メリ・メロも休業を決断しました。

緊急事態宣言時、市内の飲食店では、子供の食事を支援する店舗が多く見られ、保育園の保護者からも「食事づくりが大変」という声が多く聞かれました。そこで、メリ・メロでも何かできないかと、理事長、統括園長と協議し、他店舗ではあまり見られなかった夕食支援のお弁当販売を開始しました。

お弁当販売にあたっては、店頭販売と予約受付も行い、販売・受け渡し時間を16時から17時までに限定することで、携わる職員数が少なくても対応できるように工夫しました。販売数は50食限定としていましたが、実際には60食ほど作っていました。メリ・メロの厨房は、一般家庭の厨房機器を使用しているため60食が限度でした。管理栄養士と保育士の2名でお弁当づくり、仕上げ、販売まで行いました。

お弁当の内容は、主菜の魚、肉、副菜を毎日ランダムに変えました。管理栄養士の監修により、栄養バランスを考え、さまざまな食材を使用しています。コロナ禍で買い物にも行けない方にも、食の面から健康を維持してもらえる内容としました。チラシは、保育園に勤務する保育士が作成しました。

 

お弁当販売期間中にアンケートを実施

メリ・メロでは、日頃から不定期にアンケートを実施しています。今回のお弁当販売期間も、地域のニーズを把握するため、アンケート調査を実施しました。アンケート結果からは、「マスク、消毒剤などの物的な不足があった」「友人との交流、会話、娯楽が減ってしまった」「コロナへの感染が不安」「感染症対策などの具体的な方法が知りたい」など、日頃からメリ・メロが大切にしていたコミュニケーション、情報提供の部分が不足している傾向が見られました。

一方、お弁当の販売事業は、コロナ禍での手探りの事業でしたが、栄養バランスのとれた食事の提供ができたことや、週替わりで健康に関する豆知識の情報も入れたことで、少しでも地域の皆様のご要望に応えられたのではないかと考えています。

<お弁当を買った方の声>

  • お昼の弁当は多いが、夕食用はスーパーくらいしかないので助かる。
  • 管理栄養士監修なので安心できる。
  • 安いので助かる。
  • 早くお店を再開してほしい。

 

感染対策してカフェを再開

これまでの情報配信はLINEだけでしたが、弁当販売を行っている自粛期間中に、ホームページの新設やフェイスブックも始めました。直接会うことができない中で、今後も新しいコミュニケーションツールとして、活用していきたいと考えています。フェイスブックやホームページは職員の手づくりです。メリ・メロの今後について伺ったアンケートの項目では、「今までどおりでよい」という声が一番多く、開店からメリ・メロが取り組んできたコミュニティづくりが間違いではなかったと感じ、嬉しかったです。

6月半ばから、スタッフ全員に感染症対策の周知を行いました。会議を重ね、管理栄養士による衛生研修、店内清掃を行い、7月7日より通常オープンしています。

オープンに際しては、日本フードサービスのガイドラインに基づき、検温や連絡先の記入をすべてのお客様にお願いしています。また、店内の座席は半数にして対応しています。オープン後、「感染症対策がしっかりしているのでメリ・メロに来た」「お弁当しか利用したことはなかったけれど、実際に店内で皆さんと交流したいと思って来店した」という声も聞かれ、嬉しく思っています。

 

お弁当販売で高齢者との接点が増えた

令和2年3月から6月までのお弁当販売期間に、羽村市と羽村市商工会によるテイクアウトの推進イベントがありました。そのおかげで、多くの方にメリ・メロを知っていただくことができ、コロナ禍前とは違う層の来客が増えました。7月の再開以降も、お弁当での利用しかなかったお客様の来店があり、お弁当支援を実施したことによる集客効果は大きかったと思います。

コロナ禍以前の通常営業では行っていなかったテイクアウトを8月より導入した結果、なかなか外食はできないという方やリモートワークをされている方の需要が多くあることがわかりました。

9月には地域高齢者団体の方々が恒例の集会ができずに困っているとの相談を受け、テイクアウト弁当を会員の皆様へ届けるという支援活動に協力させていただきました。その際に、管理栄養士が健康に関するコラム「メリ・メロの健康まめ知識」を書き下ろし、小冊子にして配布したところとても喜ばれました。

 

2度目の緊急事態宣言でテイクアウトに切り替え

令和3年1月の2度目の緊急事態宣言を受け、再度テイクアウトのみの取り組みをしております。1回目は夕食のみの支援でしたが、今回はリモートワーカーの増加や高齢者からの要望などを考慮し、昼食と夕食の両面からの支援を始めています。お弁当の価格は1度目の時には300円としていましたが、2度目の時にはすでに通常営業でテイクアウト(味噌汁付きで500円)を始めていたこともあり、400円の価格としました。お弁当のみの販売を始めて2週間後からは、高齢者の方の生活が困窮しているとの報道を受け、70歳以上の方には300円で提供しています。

 

利用者や地域住民からの声

<7月までのお弁当販売>

  • スーパーなどのお弁当に比べ、栄養バランスも考えられ、値段も安くてお弁当は毎日助かっています。
  • 量がちょうど良い。一人暮らしでは多くの品数は作れないけどお弁当はいろいろな野菜が入っていて、美味しくて助かる。
  • 近所のスーパーが閉店してしまい、お弁当が買えて助かった。
  • 価格が安いこともあり、継続した運営を心配されるとともに、「今後も続けてほしい」との応援をいただいた。
  • コロナ禍以前に利用いただいていた常連の方からは、通常の営業再開を望む声を多く頂いた。

<7月のメリ・メロ再開後>

  • メリ・メロでまた食事が楽しめて良かった。
  • 感染症対策をしっかりと行っていることを周知するポスターを張り出していたので、「安心して利用できる」といっていただいた。

<2度目の緊急事態宣言以降から現在まで>

  • 保育園の園児が育てている畑で収穫した大根、ほうれん草、小松菜、のらぼう等を調理してお弁当に入れていたところ、「安心安全な食材の利用が嬉しい」「お孫さん、お子さんが作ったものを食べられて嬉しい」との声。
  • 「テイクアウトではなく店内で食べたい」との声が多数。

 

職員・スタッフの変化

感染症対策のためお客様との距離を保って接することしかできなくなってしまいましたが、そのような中でもお客様からの要望に応えられるよう、小さなシグナルに気づき、今まで以上に気配りをするようになりました。コロナ禍という特殊な状況下ということもあり、各スタッフが「メリ・メロ」という場のあるべき姿や地域における役割、それに対して自身がやるべきことや足りない部分などをよく考えて発言するようになったと感じています。

 

新しい形のコミュニケーションを

令和2年3月から現在(令和3年2月)に至るまで、イベント開催はできておらず、今後リモートやライブ配信等によるイベントを行っていきたいと考えています。感染症対策下における新しいカタチの「コミュニケーション」をどのように確立していくかが課題です。また、従来から変わらない部分ではありますが、スタッフやお客様からのご意見をメリ・メロの運営に反映させ、地域の中で欠かせない存在に発展させていきたいと考えています。

 

これからのメリ・メロ

地域の子育て支援を柱としてメリ・メロを開店して3年弱が経過しました。地域の皆様が必要だと思われること、求められたこと、やれるだけのことをスタッフと財源を投じて行ってきました。しかし今、300円のテイクアウト弁当を作ることを当時のだれが予想したでしょうか。

コロナ禍の緊急事態宣言の中、カフェからテイクアウトへシフトした結果、メリ・メロの利用者はコミュニケーションとつながりを求める若いママ世代から、生活すること・生きることが切実な高齢者へと移行しています。利用者の傾向を察知して、お弁当販売を70歳以上の方には300円で提供をしたことも大きな影響があると思います。高齢者世代には値段が安くて栄養バランスの良い食事が何より楽しみで必要でもあります。 「身体に良い」「財布に優しい」は皆の共通項です。食事に加えて高齢者のニーズはまだあります。お弁当受け渡し窓口に来てスタッフとよもやま話をしないと帰らない人、足が悪くてお店まで行くのが辛い人、100円安くなるからと家まで年齢証明書を取りに帰る人、そうかと思えば300円でやっていけるのかと店の懐を本気で心配してくれる人など、テイクアウト販売は予測に反してメニューに関わらず日に日に増加しています。

今後、地域高齢者団体やお弁当利用者とさらにコミュニケーションを取りながら、もっと必要な人に届けられるよう宅配サービスやボランティアデリバリーなども取り入れたいと思います。少子高齢化で定員割れがすぐそこにあり、法人の経営も不透明な中「たゆたえども沈まず」をもう少し皆で頑張ってみるつもりです。どこへ辿り着くのかは誰にもわからない。

 

令和2年度に開催した「コロナ禍の地域公益活動を考えるオンライン実践発表会」において発表いただいた内容を編集しました。
発表者 社会福祉法人松栄福祉会 保育士 中村 鮎美さん 管理栄養士 式地 亜矢さん