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東京都地域公益活動推進協議会

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ワンチームでコロナに立ち向かう~コロナ禍の地域公益活動の取組み~

社会福祉法人武蔵野会 リアン文京(文京区)

テーブルを囲み、利用者やスタッフが食事をしている様子

令和2年8月7日に開催した「コロナ禍の地域公益活動を考える オンライン実践発表会」で発表いただいた内容を掲載します。
発表者:社会福祉法人武蔵野会 リアン文京 野村美奈氏

令和2年10月2日掲載

「自分を愛するようにあなたの隣人を愛せよ」

社会福祉法人武蔵野会の理念は、「自分を愛するようにあなたの隣人を愛せよ」です。リアン文京は、東京都文京区小日向にあり、子どもから高齢者、障がい者まで、さまざまな事業を行う複合施設です。私たちは、 「絆社会の実現を目指す」というミッションのもとで、自分、チームのメンバー、利用者、地域社会という4つのベクトルでつながりを深めています。

コロナ禍で法人理念に立ち返る

コロナ禍において、私たちが一番最初にしたことは理念に立ち返ることです。連日、報道されるさまざまなニュースで、当たり前ですが職員1人1人が不安になったり、揺らいだり、 「不要不急とは一体何だろう」 「私たちにできるサービスは何だろう」と考え始め、迷うこともありました。そこで、皆で一度立ち止まって理念について考え、私たちの仕事の意義や目的、社会的使命、不安な時こそ「利用者のために私たちがいること」を再確認しました。その中でこれから何をすべきか、「そうだ、ワンチームで向かっていこう」という気持ちが醸成されていきました。

次に、感染症対策本部を立ち上げました。皆で感染症に立ち向かっていこうと、各事業の代表職員が集まり、週に一度の会議を開き、感染症対策を行っています。会議では施設の現状やエビデンスをもとにした新しい情報の確認と、1週間で何をどこまで進めるかの計画を確認していきました。そして翌週には情報の共有、計画の進捗確認をしてPDCAサイクルを回していきました。そしてこの会議体で決めたことを、感染症対策委員会主導で全体に周知していきました。例えば手洗い研修や、嘔吐物など汚染物の処理方法を感染症対策委員会が全職員に伝えていきました。現在は全員で集まってはいませんが、ワーキンググループをつくり、定期的に消毒ができているか、新たな対策などを確認し合っています。

 

安全確保とニューノーマル

私たちが大切にしている、4つのベクトルのつながりについて説明します。

「自分」のベクトル

1つ目のつながりは、自分です。「自分を愛するように」と理念にあるように、私たちは、まずは自分自身をケアすることを大切に考えています。ストレスで日常より緊張を感じたら、休憩時間には必ず外へ出て深呼吸をして自分を取り戻すこと、先の不安にとらわれず、今この瞬間を大切にすることを職員に伝えています。マインドフルネスを積極的に取り入れています。また私たちには、どういう職員でありたいかを記したクレド(信条)カードというものがあり、それをもう一度、皆で読み返しました。ふだんから折に触れて読み返したり、クレドカードをもとに研修をしたりしていますが、もう一度私たちが大切にしている価値は何かを思い出し、もう一度、ワンチームで向かっていくという思いを新たにしていきました。

「チームメンバー」のベクトル

2つ目は、チームのメンバーです。リアン文京では、開設当初から職員集団を「チームリアン」と呼んでいます。子どもから高齢、障がいまでいろいろな事業があるのですが、事業単位ではなく職員が横断的につながっていることを大切に考えてきました。今回は皆がそれぞれ役割を持ってコロナ対策を行うという意識づけのために、いろいろなことを行いました。インスタグラムのメッセージもその1つで、外部へ向けての発信ですが、それを1枚ずつ写真撮影して、職員が通る階段に掲示しました。テーマは「一緒に頑張ろう」というものに絞って、その時期は毎日発信し続けました。

各事業では、コロナに関していろいろな取り組みを行っていましたが、それを各事業で通信にまとめて職員全体に紹介しています。施設長は、手紙で職員に「一緒に頑張っていこう」というメッセージを発信し続けています。他に緊急事態宣言中、区から休業中の子育てひろばを借りて、職員のリフレッシュのための休憩場所を作りました。職員の描いた絵を飾って、音楽を流して、仕事とは離れてリフレッシュできるくつろげる雰囲気をつくりました。そして勤務している職員だけでなく給食や清掃、送迎などの業者さんもチームのメンバーと考え、毎日1杯のコーヒーをカフェから提供し感謝の思いを伝え、励ましあってきました。

「利用者」のベクトル

3つ目のつながりは利用者です。フィジカルディスタンスや3密緩和をポジティブに捉え、個別支援を進めるきっかけとしました。例えば通所部門では活動場所の構造化を行う一方で、施設のいろいろな場所を小人数で活動できるように設定して、小さな集団での個別活動を行うことができるようにしました。入所施設の生活では意識して花や絵画、音楽、アロマを取り入れて潤いのある空間にしつらえ、利用者と担当職員が一緒にステイホームを考え楽しめることを探し、生活を広げました。動物が好きな方には、なでると鳴く猫のロボットを取り入れたり、居室で折り紙を一緒に折ったりなど、利用者さんにとってのステイホームとは何かを一緒に考え実現させてきました。

「地域社会」のベクトル

4つ目は、地域社会です。リアン文京では数百人規模の活動を行ってきましたが、実施は不可能になりました。そこで全事業所のオンライン化を進めて、栄養士の離乳食相談、介護予防の体操をYouTubeで流すなど専門職のサービスを多様な形で提供しています。

あわせて以前に行っていた活動を、どのようにして安全に再開するか考えました。例えば「縁が和」という以前より続けていたサロンを、人数を減らし子どもがいる家族を対象にしたプラレールで遊ぶ会に切り替えました。家族単位で広いスペースでプラレールを思いきり遊べるサロンです。以前より手伝ってくれていたボランティアさんにも声をかけ、活動を再開することができました。他にも学習支援のお子さんたちにカレーを提供したり、小さなことですが1つ1つ安全にできる方法を考えて再開しています。

また、社会貢献として利用者さんと一緒にフェイスガードやエプロンを作成し、地域の施設やクリニックへ無償配布も行いました。

キーワードは新しい「つながり方」

これから私たちが行っていきたいのは、一つ目は、withコロナ時代の地域公益活動の継続です。今までつながった方たちとつながり続けることと、新しい人々との新たなつながりを作っていくことです。施設に来なければできないのではなく、来られないなら、どういうつながり方ができるのかをもう一度考えて取り組んでいきたいと思っています。

二つ目は、ICTの活用と情報リテラシーの促進です。子育て世代からシニアまで情報アクセスの支援を行っていきます。スマホを使えない、パソコンを持っていない、というシニアの方々には、小さなスマホ講座を定期的に行っていくなど、情報弱者と呼ばれる方にも、正確な情報が届くように取り組んでいきたいと思います。

三つ目は、障がい者の社会参加です。コロナ禍においては、障がいがある方もない方も、子どもも大人もシニアも、皆が等しく当事者です。障がいのある方も、アートの分野などで自分の強みを生かし、それぞれができる活躍を考えていきたいと思っています。

四つ目は、withコロナの専門性の発揮です。私たちは、障がい者福祉、高齢福祉を行っていますが、在宅と連携した専門的な個別支援では、引きこもりの方にZoomで言語療法を始めました。施設に来るのが難しく、つながれなかった方でも、Zoomならできるなど、コロナ禍を逆手にとって、新しい活動ができました。このようなかたちで、私たちの専門性を発揮していきたいと考えています。また、新型コロナウィルス感染症における一時保護所の開設、運営も必要だと考えています。文京区の障がい者の入所施設はリアン文京のみです。社会的な役割として、ご家族が濃厚接触者となった場合、支援する人がいなくなり、行き場がなくなった障がい者の受け入れ体制を文京区と一緒に整え開設に向けて準備しています。

 

地域に支えられ、できることを継続

令和2年8月に開催された「コロナ禍の地域公益活動を考えるオンライン実践発表会」で発表してから、早いもので7か月が過ぎました。あれからまた緊急事態宣言は発令されましたが、今も「できることからやろう」の精神で小さく1つずつ続けています。大切なことは職員一人一人が「一緒にやればできる」という気持ちを持ち続け、できることから始めるということなのではないかと思います。

そして今回私たちがとても励まされたことがありました。それはマスクが全く購入することができなかった時期に、全く知らない方々からも「大変でしょう、頑張ってね」という言葉とともに手作りのマスクをたくさんいただきました。マスクだけでなく消毒薬や有機野菜やお菓子などいろいろなものを、知っている方や、全く知らない方からもいただいたのです。この地域の中でたくさんの皆さんの温かい気持ちに支えていただいていることが感じられた出来事でした。

これからもまだ新型コロナウィルス感染症の対策は続いていきます。それでもその中で出来ることを1つずつ、利用者さんと一緒にいろいろな人々といろいろな形でつながっていきます。

令和2年度に開催した「コロナ禍の地域公益活動を考えるオンライン実践発表会」において発表いただいた内容を編集しました。
発表者 社会福祉法人武蔵野会 リアン文京 野村 美奈さん