社会福祉法人の使命に基づき、地域における福祉課題の解決に向けて、3層による地域公益活動を推進します。

東京都地域公益活動推進協議会

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3つの社会福祉法人の共同運営による地域公益活動~桐ヶ丘サロンあかしやの取り組み~

社会福祉法人東京聖労院

あかしや入口

令和元年10月2日開催「社会福祉法人の地域における公益的な取組み実践発表会」において発表いただいた内容を編集しました。

発表者:社会福祉法人東京聖労院 東京都北区桐ケ丘やまぶき荘地域包括支援センター
生活支援コーディネーター 内田 美穂氏

東京都北区桐ケ丘の特徴

桐ヶ丘サロンあかしやの取り組み・その後

「桐ヶ丘サロンあかしや」のある北区桐ケ丘には、築60年を経過した大規模な都営団地があります。現在、建て替えが進んでいますが、高齢化率、後期高齢化率が突出して高いエリアです。桐ケ丘1丁目の高齢化率は59.3%、後期高齢化率は39.7%、桐ケ丘2丁目の高齢化率は56%、後期高齢化率は35.8%です。
「桐ケ丘サロンあかしや」は、三つの社会福祉法人が共同で運営しています。知的障害者の就労支援事業を行うドリームヴイ、北区社会福祉協議会、私たち東京聖労院です。
障がい者の就労の場として、また誰でも立ち寄れる常設の場として開所しましたが、スタートして2年目に、訪れるお客様から、「周辺には、夜に食事ができる店がなく、あかしやで夕飯も食べられたら便利なのに」「お酒が飲めたら、男性客も来るかも」といった声を聞くようになりました。そこで、この地域の住民の方々が、どのようなことを求めているのかを調べることにしました。

 

地域調査の実施

まず、「桐ケ丘サロンあかしやで、夕食とお酒が提供出来たら、孤立しがちな高齢の男性も外に出る機会になるのではないか」という仮説を立て、高齢者の食行動に関するアンケートをとりました。団地近くの桐ケ丘中央商店街には、ドリームヴイが運営するカフェレストランもありますが、閉店した店舗も少なくありません。そこで、「遠くまで外出することが困難な高齢者は、買い物や食事に困っているのではないか」「食行動の実態はどうなっているのか」「夕食が食べられる場所ができたら来てくれるか」などについて、聞き取りを行うことにしました。
調査の方法は、フォーカスグループインタビュー10団体、集団面接調査3団体35名、個別訪問調査57名としました。東洋大学と東京家政大学の先生方に協力を仰ぎ、手法や手順などを学んで、実際に調査にも同行してもらいました。高齢者へのヒアリングは、大学のゼミ学生が3人1組で行いました。
先生方も公営住宅での調査は経験がなく、事前に自治会などに戸別訪問調査を行いたいと相談すると、「最近は詐欺の注意喚起で、高齢者は敏感になっているので、警戒心も強く、ドアを開けてくれないと思う」とアドバイスされました。結果的には、92件の調査ができましたが、確かに断られることも相当数ありました。訪問販売と間違えられることもありました。その中で、92件というサンプル数が取れたのは、地域をよく知る方が仲介役で入ってくれたお陰です。この調査で、地域をよく知る方と知り合えたことが、後々の活動にもつながっていきました。

 

調査から見えてきたこと

調査から見えてきたことや住民の声は次のとおりです。

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・調査協力者の約5割が地域のイベントに参加していない。
・そもそも、どのようなイベントが行われているのか知らない。
・参加するきっかけがなく、誘われれば参加する。
・食生活や栄養の偏りを心配している人がいる。
・同年代との交流や体操のニーズは男女共に高い。
・一人で食べるのは寂しいが、夜の外出は恐い。
・お酒のニーズは高くない。
・朝食なら行く。外に出るきっかけになる

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調査の結果からは、「地域で行われているイベントを知らないので行かない」「誘われないから行かない」など、情報が行き渡っていないという現状が見えてきました。また、食行動に関しても、「困っていない」と回答する人の中には、よくよく突っ込んで話を聞くと、毎食同じものを、しかも一人で食べているなど、問題意識が薄い姿もみられました。さらに、夜は外出が恐く、足元も不安なので出かけないという声も聞かれました。
したがって、この調査からは、事務局で仮説として立てた「夕食とお酒」ではないことがわかってきました。逆に、「朝食なら行く」「朝の短時間なら出かけるきっかけになる」「何なら手伝ってもよい」という意見もあり、事務局としては、全く予想していなかった展開で、少し戸惑いました。しかし、調査票とにらめっこをしながら、出てきた意見に目を凝らしていくと、住民がどのようなものなら参加したいのか、という活動のヒントが見えてきました。

 

桐ヶ丘式「朝活」プロジェクトの誕生

調査後には、住民懇談会を開き、調査に協力してくれた団体、個人、それから行政、ケアマネージャーなど、およそ50名が参加しました。そして、次の「桐ヶ丘サロンあかしや」の活動として、「朝活」をテーマに、グループに分かれて話し合いました。社会福祉協議会では、こうした手法を多く持っているため、私たち事務局としては学ぶところがたくさんありました。
その中で見えてきたキーワードは、「魅力ある朝食」「身体を動かすこと」などでした。また、「社会参加」「みんなと一緒に」というキーワードも大切だと考え、これらを付け加えて、「桐ヶ丘式朝活プロジェクト」を立ち上げました。
そして、朝活説明会を開催し、地域の栄養士や理学療法士などの専門家に、それぞれの見地から朝活の効果について意見を求めました。そこで、健康や生活リズムを整えるという面から、とても良い取り組みであるという言葉をいただき、朝活に新たな意味づけを行うことができました。この時のお話がとても良い内容だったため、朝活説明会に講演会をタイアップして、運営メンバーの募集につなげました。
準備会では、平成31年3月の段階で、四つのボランティアグループが立ち上りました。ドリームヴイのメンバーの保護者、元ケアマネージャー、元教師、それから区が養成したボランティアなど、多彩な顔ぶれが揃いました。また、調査に協力してくれた学生たちも、引き続き朝活の手伝いで参加してくれることになりました。
今回集まったメンバーには、ボランティア経験のない人も多く、この取り組みが担い手の掘り起こしにつながったのではないかと感じています。朝活プロジェクトは6月にスタートし、各グループが週1回ずつボランティアで参加しています。

 

朝活の流れ

朝活の流れ

朝活は、毎週火曜日の開催です。午前8時にメンバーが集合し、朝食の準備を始めます。そして、9時に北区が考案した北区さくら体操を行います。お客様、スタッフ、商店街にいる方も巻き込み、あかしやの前に集合して、行っています。朝食は、とても美味しそうです。10食を用意していますが、参加者は2~8名というのが現状です。
朝活プロジェクトから3か月が経過し、課題を出し合ったり、意見交換を重ねたりしてきました。スタッフの負担を心配しましたが、「楽しい」「5千円の軍資金のやりくりが面白い」といった前向きな意見に助けられています。地域包括支援センターの立場としては、新たな高齢者の交流の場として、朝活という場ができたことを嬉しく思っています。
「桐ヶ丘サロンあかしや」の運営にあたっては、事務局の3法人以外に運営委員会という組織を設けており、さまざまな人が参加しています。定例会を2か月に1回開催していますが、そこからの意見を吸い上げることで、発想が広がることも多いです。

 

今後の課題と取り組み

孤食や食生活を心配している人や誘われたら行くという「きっかけ」を待っている人たちに、どうやって情報を届けるのか、誰が情報の発信者となればいいのか、これらを仕組み化することを考えています。といっても、大袈裟なことではなく、「Aさんを誘うのはBさんにお願いしよう」といったつながりを少しずつ広げていく、ということです。令和元年10月半ばには、ケアマネージャー、区、地域包括支援センターの方々を集め、検討会を予定しています。
最後になりますが、私たちのような、地域にありながら地縁組織ではない社会福祉法人などの力を借りることで、もともと地域にあった自治会や商店街などの組織が元気になっていくことがあってもよいのではないか、と感じています。「桐ヶ丘サロンあかしや」の取り組みを通じて、そういったことも地域内に広げていきたいと考えています。

 

<法人紹介>

社会福祉法人東京聖労院

東京聖労院は「四恩報謝(天地・父母・国・衆生の恩に報い、感謝する心)」の教えに根本を置いた「聖労(報いを求めない聖き労働)」を実践している。1926年、東京浅草において生活困窮者を収容保護する救済事業を開始。1928年、豊島区に移り、「東京聖労院」を開設。戦後は生活保護法の更生施設、母子寮の経営を行い、その使命が終了した後は、1996年より高齢者福祉、さらに2003年からは児童関係の事業を進め、現在は、都内4区市で特別養護老人ホームとそこを拠点とした高齢者福祉事業、2区での児童館、学童クラブ等の運営など、事業所14か所を展開する。2016年、地域の公益的な取り組みとして「桐ヶ丘サロンあかしや」の運営を開始した。