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東京都地域公益活動推進協議会

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安心して豊かなシニアライフを過ごしていただくために ~緑苑・安心シニア塾7年間の軌跡と役割~

社会福祉法人多摩同胞会

安心シニア塾

職員が講師になり手作り感を大事にしている安心シニア塾を紹介します。7年間で延べ3,000回開催する中で、交流会等を通じて参加者同士が顔見知りになり、施設の理解者・応援者になる等、相乗効果がでています。

令和元年10月2日開催「社会福祉法人の地域における公益的な取組み 実践発表会」において発表いただいた内容を編集しました。

発表者 社会福祉法人多摩同胞会 養護老人ホーム信愛寮施設長兼緑苑副施設長 野尻 俊介氏

緑苑の地域交流スペース

多摩同胞会緑苑は、養護老人ホーム「信愛寮」、特別養護老人ホーム「信愛緑苑」、「府中市地域包括センター緑苑」などの事業を行っています。安心して豊かなシニアライフを過ごしていただくことを目的とした「安心シニア塾」は、緑苑を会場として府中市から受託の法人三地域包括支援センターで運営しています。

地域包括支援センター緑苑は、平成23年度に府中市の委託を受けてスタートしました。緑苑には、地域の福祉的避難所を想定したかなり広い地域交流スペースがあります。日頃は包括支援センターの介護予防事業などで活用したり、フリースペースとして近隣の高齢者に自由にサロン的に使っていただいたりしています。情報検索用のパソコンを設置したり、毎日1食500円の昼食会も実施しています。

安心シニア塾の誕生

緑苑は、住宅街にあることから、この地域交流スペースを近隣の方々に身近な施設として使っていただきたいと考え、法人内市内三施設で構成する府中エリア事業検討会議において、活用方法を検討しました。平成25年当時、市内の状況としては、介護予防の取り組みが活発でしたが、市内から遠い地区が中心であったことから、緑苑からは参加しづらい状況でした。また、社会福祉協議会などでは、終活や成年後見などさまざまなテーマの講演会が単発で開催されていました。しかし、私たちの肌感覚として、地域の高齢の方々は、もっと身近なことについて不安を感じているのではないか、トータルに連続した講座ができないものかと検討していました。

また、緑苑としては、地域交流スペースを中心に地域の方々が気軽に来られる施設にしていきたい、これまでの事業で蓄積してきたノウハウを地域の皆さんに還元したいと考えていました。こうした経緯の中で、緑苑を会場にした「安心シニア塾」案が浮上しました。そして、検討会議では、次のことが決定しました。

<検討会議での決定事項>

  • 老いの準備講座として、高齢者が不安に思っていること、知っていれば安心できることなどをトータルに伝えられる連続講座を開催する。
  • 講座のテーマは、参加者人数に合わせて柔軟に設定する。
  • 受講料は無料。6か月を1クールとして、基礎講座、専門講座を開催する。
  • 基礎講座は、高齢者をよく理解している包括支援センター、在宅のサービス部門、養護老人ホームの職員が講師となる手作りの講座にする。
  • 専門講座については、外部講師も含め、専門性を深める内容にする。
  • 各参加者は、スタンプカード式の受講カードを作り、受講時の手間を省く。
  • 各期間で皆勤参加の方には修了証をお渡しする。
  • チラシを作成し、包括の講座・自治会での回覧・公共施設配架などでPRする。
  • 「シルバー」ではなく「シニア」と表現する。
  • 将来的にはボランティア活動などでアクティブに動いていただけるように働きかけていく。

この中で、もっとも大きな部分と考えたのは、「基礎講座は職員が講師となる手作りの講座にする」という点です。結果的に職員にとっては、肌で感じてきたことを明文化する力を養成する場になりました。

シニア塾のコンセプトは、「安心して豊かなシニアライフを過ごすため、また安心して老いを迎えるため、普段の生活における福祉・介護・医療の不安を安心に変える」としました。

手作りの講座を実施

第1期は、平成25年度に実施しました。この時期は、まだ私たち職員だけで講座のテーマや内容を考えていました。たとえば、「老いを生きる」「定年後の生活資金」「多様化するシニアの住まい」「シニア世代の健康」などです。今、振り返ると、少し堅いような気がしますが、当時は、まずはこうした内容を具体的に参加者目線でお伝えしたいと講座を組み立てました。

平成25年度から令和元年度前半の基礎講座まで、トータルで90回の講座を開催しました。実績としては、参加者が実数475人、延べ3千人超です。参加者層は、70代の女性が圧倒的に多く、男性は全参加者の五分の一程度です。しかし、男性はしっかりと有用性を判断して参加されていました。メリットを感じてもらえると、受講につながっていたようです。

講座の特色として、講座ごとに理解・満足度の確認や意見・要望を聞くために、毎回アンケートを実施しています。そこで出てきた意見を講師にフィードバックして、次回講座に活用したり、次の専門講座のプログラム・内容に反映したりしています。

このアンケートに関しては、平成27年度第3期目になると、「資料の文字はもっと大きいほうがいい」「空調をもっと調整したほうがいい」など、主体的に参加していただいていることを実感できるような意見が集まるようになりました。

講座参加から広がる交流

安心シニア塾 チラシ

それを受け、平成28年度第4期目は、講座を聞くだけでは物足りず、もっと話したいという要望を受け、講座終了後に交流会を開くようになりました。「講座が終わった後、お互いに意見交換出来る交流会を。」と呼びかけたことが奏功して、さまざまな意見が出ました。平成29年度第5期目には、参加者有志による「シニア事務局」ができ、当日の資料配布やお茶の準備など自主的な活動が始まりました。また、全講座終了後の活動として、自分が地域でどのような活動をするかを考える、安心づくりコースも始まっています。

 

実施講座の紹介

基礎講座、専門講座は、期ごとに参加者の意見を反映してプログラムを作りました。たとえば、平成30年度第6期の基礎講座には「身体の動かし方」「自宅で生活するための必要なサポート」など、スタート時にはみられない内容も出てきました。その一方、健康と病気などのテーマは参加者の関心が高く、内容を工夫しながら継続しています。

一方で、平成30年度第6期は参加者の減少がみられ、企画の再検討・課題分析が必要と考えましたが、第7期となる今年度は再び毎回50名前後に参加者が増えました。その理由は既存参加者の口コミやお誘いによるものが大変大きく、安心シニア塾の地域への浸透、定着を実感しました。継続することの重要性もあらためて感じました。

安心シニア塾の効果と評価

安心シニア塾の効果として、多くの方が参加していただいたことで、夏祭りのボランティア参加や定期的な地域でのボランティア活動など、行動を広げた方が増えてきました。さらには、参加者が地域の方々をつなぐ役割も荷うようになっています。参加者は自分の役割を理解し、身近な人に緑苑のことを話して下さり、地域では「困ったことは、緑苑に相談すればいい。まずは身近な包括に。」というムードが醸成されています。

また、参加者が顔なじみになっていくことで、道で出会っても助け合えるような関係になっているそうです。府中市に転居して間もなく、知り合いもいない中で講座に参加することにより、顔見知りができ、そこから居場所を見つけていく方もいます。このように関係性が密になり、活動に生きがいを見出した参加者は、交流会での発言が活発になったり、シニア事務局の活動にも更に積極的に参加する方が増えてきました。

お仕着せではなく、参加者の意見・要望を反映して丹念に講座を作ってきたことが、長く続く力になっていると感じています。普段の暮らしの中での不安を安心に変えるヒントとして、当初この講座が意図したことが実を結びつつあるように思います。地域の中に一人一人の口コミで広がり、包括支援センターの浸透をはかることが、シニア世代の安心につながっています。また、老いを考えることで、死にも向き合う場になっているようです。参加者ととともに作り上げている安心シニア塾は、講座にとどまらない効果を実感しています。

<法人紹介>

社会福祉法人多摩同胞会

昭和35年、東京都府中市武蔵台にて、養老施設「信愛寮」で認可を受ける。昭和38年、老人福祉法制定により、養護老人ホーム信愛寮となる。平成6年、都道用地収用に伴い、府中市緑町に養護老人ホーム信愛寮、小規模特別養護老人ホーム信愛緑苑を併設。また、拠点名を「緑苑」と総称する。平成15年、緑苑在宅介護支援センターを受託開始。平成23年、増設に伴い特別養護老人ホーム60名・地域密着型特別養護老人ホーム20名・短期入所生活介護10名・養護老人ホーム50名の入所施設となる。さらに、地域包括支援センター緑苑事業を市より受託。災害避難所を兼ねて整備した地域交流スペースで、安心シニア塾を開催している。