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コロナ禍での新しいイベント様式 ~あしたばカフェ・介護の日イベント~

社会福祉法人東京栄和会 なぎさ和楽苑(江戸川区)

なぎさ和楽苑では、東京都若年性認知症支援モデル事業に参画し、若年性認知症専用のデイサービス・家族会の運営、「介護の日」などの地域に向けたイベント等を開催していました。コロナ禍では、家族会をオンラインに切り替えて再開しました。「介護の日」のイベントは、youtubeチャンネル、インスタグラム開設、オンラインセミナー等を開催しています。

令和3年6月28日掲載

なぎさ和楽苑の紹介

なぎさ和楽苑は、昭和55年に、江戸川区西葛西にて江戸川区最初の特別養護老人ホームとして運営を始めました。特養に加え、都市型軽費老人ホームの入居施設、通所介護や短期入所等を中心とした介護保険事業と江戸川区委託事業の地域包括支援センター等、合計11の在宅サービス事業を運営するほか、診療所、法人独自事業として若年性認知症支援事業に取り組んでいます。

若年性認知症の方、家族への支援

10年ほど前、当苑デイサービス利用者の50代女性が若年性認知症を発症しており、その方が親世代の利用者の中で馴染めていない様子や、高齢者対象のプログラムを行うことの違和感に、現場職員が悩んでいました。同じ頃に東京都のモデル事業募集があり、当法人の中長期計画にある認知症支援の展開に方向付けられないかと、現苑長が当時の理事長に相談したことがきっかけとなりました。

なぎさ和楽苑では、平成21年度から3年間、東京都若年性認知症支援モデル事業に参画し、本人支援として若年性認知症専用のデイサービス「フリーサロンあしたば」、家族会「あしたば会」の運営、地域に向けて若年性認知症に関するセミナー開催や通信発行等の活動に取り組んでいます。

「あしたば」というネーミングには、葉を摘んでも、次の日には若葉が出てくる生命力の強いあしたばにちなみ、生命力に満ちあふれた自由な空間、その人がその人らしい過ごし方ができる場所をつくりたいという願いが込められています。

家族会「あしたば会」には、令和2年12月1日現在、家族48名、ボランティアや支援者20名の計68名が登録しています。子供世代、大人世代・配偶者というグループごとの活動も行っています。定例の活動としては、毎月第4土曜日(原則)の定例会、偶数月第3日曜日に当苑地域交流スペースで開催する「あしたばカフェ」のほか、当事者や家族と出かけるバスハイクや学習会等のイベントを実施してきました。しかし、コロナ禍により令和2年2月以降は、一旦すべての活動を休止しています。

コロナ禍で、オンラインに切り替えて開催

コロナ禍では、家族会の活動が中心です。電話勧奨による状況把握のほか、メールやラインなどを活用し、皆さんとコンタクトをとっています。また、今後の活動について、家族会の世話役とオンラインでディスカッションを重ね、6月より定例会を再開しました。当初は、駅に近く、3密を回避できる会場を探し、開催してきましたが、その後、会場を分散してのオンライン開催、会場参加と自宅からのオンライン参加の併用で開催してきました。令和2年12月からはオンラインのみで開催しています。

あしたばカフェについては、これまで約60名が集まり、隔月で開催していましたが、飲食を伴うイベントのため、残念ながら中止しています。しかし、なんとか再開できないかと検討を重ね、12月にトライアルとして、オンライン家族会定例会の様子「あしたばカフェ オンラインバージョン クリスマススペシャル」を開催しました。

参加者がそれぞれクリスマスのコスチュームを身につけ、食事や飲み物などをお手元に準備してもらいました。そして、近況報告やビンゴ大会などを催し、休憩時間には、ギター演奏を披露してくれた参加者もおり、楽しい時間を過ごしました。なお、当事者1名は、当苑に来て、職員と参加しています。

オンラインのメリット、デメリット

自粛中の家族からの声としては、自宅で家族だけで過ごすことがストレスであり、どのように解消したらいいか、という声がありました。また、デイサービスなどが休止中の地域の方からは、日中一人で過ごすことで生活リズムが変わってしまった、という声がありました。さらに、病気の進行が心配、自分が感染したらどうしたらいいのか、スタッフからの様子うかがいの電話はとても心強かった、といった声もあり、中には、やはりコミュニケーションが大事と、力説される方もいました。

オンライン交流の感想としては、相手と離れていても、同じ空間を共有している感覚を持てる、安心感が得られる、家族会へ足を運ぶことが体力的、時間的に負荷を感じやすいときは、オンラインのほうが参加しやすい、といった声がありました。特に、若年性認知症のご家族は、介護しながら就労している方も多いため、オンラインは参加しやすかったのかもしれません。

また、オンラインにはデメリットもあり、オンラインに抵抗がある、参加したいけれど家にパソコンがない、話している人の顔が見えない、という声が上がりました。

オンライン定例会になってから、参加できなくなった方がいたのも事実です。また、家族は参加したいが、若年性認知症当事者は、集中力が途切れて飽きてしまう、という指摘もありました。さらには、参加による満足度は高くなるが、終わった後の喪失感もそれなりに高くなる、久しぶりに会えた充足感はあるが、直接会えない寂しさをより感じてしまう、という声もありました。

今後はオンライン活用を継続

当面、家族会定例会、あしたばカフェはオンラインで継続する予定です。オンライン参加へのサポートとして、抵抗感を感じる人、スマホやパソコン等の操作がよくわからない人を対象に、開催前のレクチャーを実施していきます。これまでも、希望者には来苑してもらって直接説明したり、電話説明等も実施してきました。仲間のお宅から一緒に参加された方もいます。こうした参加の仕方や、来苑しての参加とオンライン参加との併用を今後も続けていきたいと思います。

オンラインには課題もあります。あしたばカフェをオンラインで実施したところ、当事者は画面に自分が映らなかったり、仲間が映らなかったりすると、集中力が途切れてしまう様子がうかがえました。これまでのあしたばカフェは、周りからの声かけや見守りがあることで、当事者は自分の居場所として参加していたことを改めて感じました。こうしたサポートがあったからこそ、ご家族も当事者と離れて、他の家族や介護者とゆったりと話すことができたのだと思います。また、あしたばカフェでは、さまざまな方とフリーで話せるのが醍醐味でしたが、オンライン上では職員が采配するため、そうした自由度もありません。今後は、グルーピングや対象者のすみ分けをしっかり行い、できるだけ皆さんの目的に合った企画を立てる必要があると感じています。また、顔が大きく見えるように参加者数の調整を行い、オンライン参加ができない方にはウェブカメラ等の機器整備、機器貸与も検討しています。既に、気になる方が参加されていない場合があります。そうした方には来苑していただくなど、個別に繰り返し丁寧に声かけを行っていきたいです。

コロナ禍前の「介護の日イベント」

平成20年に厚生労働省が11月11日を「介護の日」と定めました。これは、介護についての理解と認識を深め、介護従事者や利用者やその家族、地域社会の支え合いや交流を促進する観点から、高齢者や障害者等に対する介護に関し、国民へ啓発するために制定しました。

当苑ではその翌年の平成21年から「介護の日イベント」を開催しています。今年度で12回目を迎えました。イベントのテーマは、 「地域でともに支えあう福祉のまちづくりを目指して」です。介護や福祉、なぎさ和楽苑と関わりの少ない人に、イベントを通して関心を高めてもらう機会づくりが目的です。その年の情勢やメッセージを加えたサブテーマを設定しており、令和2年度のテーマは「SocialConnection心とこころ♥をつなげよう」と定めました。

令和元年には、参加型の集客イベントとして、中学生ボランティア50~100名と地域ボランティアを含め、参加者が300名を超えるイベントを開催しました。福祉セミナー、エコガチャ体験、語り部企画、認知症サポーター養成講座、ブンネメソッド体験、地域の障害関係事業者等を含む多くのボランティアによる模擬店等の企画を実行しました。

コロナ禍の「介護の日イベント」

令和2年度は、こうした集客型のイベントからオンラインイベントに切り替え、スマホ教室からスタートしました。地域の皆さんには、事前にイベントで使用するSNSツールやQRコードの読み取り、LINE電話の活用などをレクチャーしました。

また、今回は、YouTubeチャンネル、インスタグラムも開設しています。当苑では、イベントの周知時に、若年層への発信が課題視されていましたが、ここでようやく実現に至りました。

また、学び舎なぎさ「オンラインボランティア講座」を開催しました。Zoomを使用し、地域ボランティアの方々との意見交換を行いました。コロナ禍でボランティア活動ができない方も多く、この機会に、ボランティア活動を再開したいという意欲的な姿が見られました。イベント後に、こちらから提案したボランティア活動に一緒に参画してもらい、活動を再開した方もいます。

介護の日の記念セミナーも開催しました。「コロナ禍にみるデンマークと日本の現状とこれから」と題して、当法人が職員海外研修でお世話になっている方々に協力して頂き、デンマークのコロナ禍での考え方である「ソーシャルマインド」等について、学びを深めるアットホームなセミナーとなりました。

そして、介護に従事される方、介護を受けている方、コロナ禍で頑張る地域の皆さんへの激励を込めて、11月11日11時11分に、300個のバルーンをリリースしました。晴天にも恵まれ、その場に居合わせた地域の皆さんからも、大きな歓声が上がり、とてもよいイベントとなりました。また、今年度は、なかなか顔を合わせることができなかったため、当苑からのメッセージとして、オリジナルのイベントソングを作成しました。作詞は、職員と利用者の合作です。今後も、大切に歌い継いでいきたいです。

 

 

 

今後につなげられること

これからはSNSツールを大いに活用していきたいと思います。今回は、介護動画も作成しました。動画作成には、特養の職員も参画しています。介護者の支援とともに、動画を通して、在宅介護を身近に感じ、また自身の介護についても振り返る職員研修の一環としても活用したいと考えています。

オンラインボランティアについては、今年度は、東京ボランティア市民活動センターの協力を得て、1年を通じて参加してもらいました。今後も地域を越え、また企業ボランティアなど新規ボランティアを獲得していきたいです。また、オンラインボランティアは、当苑のボランティア活動を中断している皆さんが、再開できる新メニューにしたいと考えています。スマホ教室では、企業ボランティアの協力を呼びかけましたが、今回はコロナ禍で実現できませんでした。引き続き、地域企業とのコラボを検討していきたいです。

イベントを通じた職員の変化

コロナ禍のイベント通して、職員に変化が見られました。オンラインイベントの可能性を感じることができ、次年度の事業計画検討時にオンライン企画の発案が増えました。また、オンライン活用が不慣れな職員も、少しずつ操作になれるために、会議等でのZoom等の活用場面が増えました。さらに、SNSを活用して当苑の活動をいかに地域に発信していけるか、コロナ禍で停滞気味であった職員の意識の高まりがみられ始めています。イベントにかかわった職員の声をご紹介します。

イベントにかかわった職員の声

介護の日イベントでの多くのオンラインメニュー等の取り組みは、大変ではあったがやりがいも大きく、何より楽しんで取り組めた。特にバルーンリリースは視覚的にも楽しいイベントとなった。イベントソングも素敵なものが出来た。介護に携わる方に聴いて頂き、お気持ちを癒して頂きたい。
オンラインでのイベント開催は、視聴して頂いている方のお声をストレートに頂くことが出来ず、反応が分かりづらい面もあった。コメント欄の活用をメッセージで伝えていくことも必要かもしれないが、反面、マイナスコメントが入ることの理解も必要か…。
コロナ禍では集うことが難しく、寂しく感じる時も多かったが、オンラインでのカフェ・定例会等で一堂に顔合わせをした時の参加者の楽しそうな表情や、盛り上がる声に、コミュニケーションの大切さを改めて感じることが出来た。オンラインイベントに慣れておらず、まだまだ研究は必要であるが、これからも盛り上げていきたい!!

地域とつながり続けるために

当苑では、平成30年からコミュニティカフェや地域食堂などを開催し、地域の皆さんと歩んできました。もっと若年層の方々とのつながりを増やすことを課題としてきましたが、まだまだ力を入れる必要があると感じています。イベント開催時の工夫として、オンライン、SNSツール、QRコードなどの活用によって、新しい様式を取り入れながら、少人数での参加型、紙媒体の活用、電話案内等の従来の様式も併用し、地域に情報が行き渡る工夫が必要と考えています。

また、オンライン開催に必要な通信機器の整備、貸与できる体制づくりも必要です。地域の声のヒアリング、中止中の「なぎカフェ」「なぎさキッチン」の様式を変えた活動再開も検討しています。例えば、飲食なし、少人数の集いの場(施設外デイ事業所のスペース活用)などを考えています。