社会福祉法人の使命に基づき、地域における福祉課題の解決に向けて、3層による地域公益活動を推進します。

東京都地域公益活動推進協議会

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お弁当配布の取組みと福祉なんでも相談の開始

社会福祉法人 多摩養育園

コロナ禍での地域公益活動の新たな取り組み

~お弁当配布の取組みと福祉なんでも相談の開始~

令和4年11月30日掲載

コロナ禍で、食堂運営からお弁当配布へ

多摩川養育園では、地域公益取組みとして、平成29年4月から光明八木町食堂を運営しています。創設者の「困っている苦しんでいるすべての人を苦しみから解放し、手を差し伸べる」という思いが、この食堂のスタートを後押ししました。発祥の地にある法人本部のラウンジで月に1回、食堂を開催し、毎月100~200名が利用していました。しかし、令和2年2月から新型コロナウィルス感染症の影響で休止。その間も、コロナ禍だからこそ支援を必要としている人に、おいしい食事をどうしたら届けられるかを検討し、お弁当配布を考えました。

多くの課題を乗り越え、民生委員と連携しお弁当を配布

しかし、お弁当配布には、課題もたくさんありました。20食以上のお弁当の配布に関する許可、食材の調達、お弁当の献立、そして誰に配布するかです。食材については、市の防災課や地域の農家、フードバンク、後援会に寄付をお願いしました。献立は法人の栄養士が毎回、バランスの整ったメニューを考案してくれました。最大の問題は、地域の中で困っている方がどこの誰なのかわからないことでした。そこで、受託運営している地域包括支援センターを通じて、地域の現状を把握している民生委員さんが一軒一軒お弁当を手渡すことで、本当に必要な人に届けることができました。民生委員は各家庭の実情にも心を配り、一緒に配布するお菓子やパン、野菜などの食品の内容を変えています。これまでは訪問しても話してくれなかった人でも、お弁当を手渡すときに困り事を訊けるようになり、「食は効果がある」と民生委員から伺っています。

 

               お弁当

 

     お弁当配布の様子

多方面からのサポートで、現在、12家庭24名にお弁当を配布しています。この活動そのものが、法人が目指す「地域の大きな家」であることを実感しています。最近では、法人内の他の施設でも青空食堂を実施していますが、今後は、他施設でもお弁当配布を検討しています。

「福祉なんでも相談」の実施

当法人ではかねてより、地域の大きな家づくりという地域共生社会の実現に向けて取組みを検討してきました。社会福祉法の改正に後押しされ、さまざまな困難を抱える住民への支援のため、「福祉なんでも相談」を行うことになりました。

目的は、当法人をこれまで以上に地域の人々に気軽に利用していただくこと、地域の人々にとって身近で公益性を持った活動を行うことです。各園施設の管理職(施設長)が中心となり、目的や認識の共有、実施に向けた事前勉強会を実施し、相談対応マニュアルや相談に関係する用語集の作成なども行いました。

事前勉強会では、相談者役と相談を受ける役に分かれ、相談のシミュレーションを行い、相談者の話をしっかり聞くこと、専門機関につなげる場合は相談者の許可を得るなど相談者が安心できる対応を行うなど相談支援の流れとともに、私たちは問題を解決するのはなく、あくまでつなぎ役に徹することを確認しました。

こうした段階を経て、令和3年4月より、「福祉なんでも相談」がスタートしました。地域に向けてチラシやポスター、のぼりなどを作成し、法人広報誌への掲載、各種専門機関への事前周知なども行いました。また、地域の町会、自治会などにチラシを持って訪問して、実際に相談の主旨なども伝えました。

地域住民からのさまざまな相談を受けて

令和4年1月末現在で、13件の相談がありました。当初は、保育園の保護者や交流のある住民、ボランティアの相談が主でしたが、徐々にのぼりやポスターを見て、これまで交流のなかった地域住民も相談に来るようになりました。

精神科通院中の方から、「施設に入るにはどこに相談すればよいのか」といった相談には、気持ちに寄り添いながら話を聞き、つなぎ先に連絡すると伝えたところ、名前や連絡先は教えてもらえず、「自分で市役所に行く」という返答でした。

障害のある保護者からの「意思疎通がうまくいかず、娘が保育園に入園できない」といった相談では、関係機関と調整し当該保育園で受け入れることができました。

 

相談がスタートしてからも、対応力向上のために研修を重ねています。最初は、電話を受けた職員が「つなぎ先を伝えないと」と必死に調べることで緊張してしまう様子が見られましたが、練習を重ねることで、まず相手の気持ちを受け入れることの大切さを理解できるようになりました。相談役を体験することで、相談者も勇気をもって連絡してくることを知りました。また、ハイリスクの自殺企図等の相談に対応するために、保健師を講師に招き勉強会を開催し、死にたいと相談された場合の対応法なども学びました。

さらに、地域との信頼関係づくりとして、「福祉なんでも相談 地域懇談会」を開催しました。法人の取組みに対して、もっと地域に出向き相談の機会をつくってほしい、素晴らしい取組みなのでもっとPRしたほうがよいといった意見をいただき、地域住民にとって施設は敷居が高い場所であること、より地域住民へ開かれた施設になるよう取り組んでいかなければならないと感じました。

「福祉なんでも相談」という取組みがなければ、当法人の園や施設に関係のない相談が来た場合に、「ここではわからないので、他で聞いてください」と答えていたと思います。この取組みを始めたことで、相談内容に関係なく、相手の話を聞くという心構えが醸成されました。また、園児や保護者、施設の入居者に対しても、まず話を聞く施設であることをより意識した対応ができるようになったと感じています。「福祉なんでも相談」はまだ始まったばかりです。専門機関とつながりながら、ますますの対応の向上を目指していきます。

《その後の取組み状況》

各施設の相談員からなる相談係会で、継続的に練習電話を企画実施。様々な相談内容を想定しながら、話を聴く力、相談対応力を磨いています。

令和4年度の相談件数は令和4年11月現在で20件を超えました。なかでも、前年度の地域懇談会で頂いたご意見をもとに開催した、「福祉なんでも相談出張相談会」では、参加された地域の高齢者から「こうやって自分たちのところに来て話を来てくれるのはうれしいね。」「妻が亡くなったばかりで、近所の人に勧められて参加してみました。気持ちを聞いてもらいたい。」など、出張相談会ならではのお声もいただいています。

 

令和4年2月14日開催「地域公益活動を考えるオンライン実践発表会」PartⅡにおいて発表いただきました内容を編集し、HP掲載時の取組状況等を追記いただきました。

発表者 社会福祉法人多摩養育園 八王子市立石川保育園 園長 高瀬祐三子氏
                光明高倉保育園 保育主任 島田静香氏
                養護老人ホーム楢の里 相談員副主任 上野裕久氏