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東京都地域公益活動推進協議会

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食支援から見守り支援へ

社会福祉法人 大洋社

大田区の母子生活支援施設の取組み

~食支援から見守り支援へ~

令和4年11月30日掲載

見守り支援「子ども虹の架け橋プロジェクト」の背景

社会福祉法人大洋社は、都内で子ども家庭福祉領域の事業を行っており、家族が幸せになるために、施設の事業運営と共に地域が幸せになる活動をすることを大事にしています。今回の取組みは、2015年に大洋社の公益的活動の「れいんぼう」の開始をきっかけにできた社会福祉法人ネットワークの「おおた福祉ネット」がつくられた大田区エリアで行っています。

「れいんぼう」は、おおた福祉ネットで出会った高齢や障害、生活困窮の支援をしているさまざまな社会福祉法人や大田区社会福祉協議会と連携して、子ども、若者、ひとり親の生きる力を身につけるためのさまざまな体験を行うものとして、年齢別に3つのれいんぼうをつくっています。その後、社会福祉法人以外とも連携するようになり、2018年には民生児童委員と社会福祉協議会の協力で、おおた子ども民生委員の活動を開始しました。今年度から食支援を行いながら、見守り支援を行う「子ども虹の架け橋プロジェクト」(以下、虹プロ)を始めました。

新型コロナウィルス感染症の蔓延で、従来の活動ができず、参加者が来られなくなったり、施設のアフターケアを利用する人たちが減少したりする一方で、ひとり親家庭から、失業や養育不安で家庭内トラブルが起きているなど、さまざまな相談を受けるようになり、食支援をきっかけに困ったときに気軽に相談できる見守り支援をしたいと考えたことが虹プロのきっかけです。また、日ごろから付き合いのある子ども食堂からも相談があり、地域子ども食堂も食支援をしやすい方法として、フードパントリーの検討を始めました。

コロナの影響を受けているのは、私たちがふだん関わっている人たちだけではありません。そこで、子ども食堂に来るひとり親世帯や生活困窮者、母子生活支援施設の子育て支援事業を利用する地域のひとり親世帯にも声をかけ、食支援の利用希望者を募ることにしました。

そして、この取組みを「虹の架け橋プロジェクト」、その中で行う食支援は「お福分けフードパントリー」と名付けました。この事業は、子ども食堂「だんだん」と、ロータリークラブの会員がつくった子ども食堂「ポセイドン」と大洋社が連携し企画しました。週1回のペースで役割分担などを話し合いましたが、重要視したのは、「大切にしたい思いを共有すること」でした。

複数の団体の関わりでパントリーの仕組みづくり

課題はたくさんありました。食材確保、保管場所、運搬方法、資金といった課題について、何度も話し合いました。大田区社会福祉協議会が取りまとめている子ども食堂が31団体のうちお福分けフードパントリーをやってみたいという14団体と大洋社の母子生活支援施設を含め3施設17カ所でフードパントリーを行うことにしました。

しかし、食材を配布しようにも、決まった場所を確保しづらい子ども食堂が多く、また冷蔵庫もスタッフも少なく、食材を取りに行くことが難しい団体も多くありました。そこで、大田区内を4エリアに分けて、助成金で購入した冷凍冷蔵庫をその4か所のハブ拠点に置き、近くの拠点に食支援提供日の直前に食材を取りに行けるように調整しました。運ぶ手段がないときは、運転ボランティアにつなぎ、パントリー活動がしやすくなる工夫もしました。

食材は、主にロータリークラブの方が勤める企業から月に2回提供されます。提供食品のリストをもらい、子ども食堂やハブ拠点ごとの配分リストをつくり、区内4つのハブ拠点に配送トラックが食材を運ぶ仕組みをつくっていきました。この配送トラックも企業の無償協力です。こうした仕組みをつくれるようになったのは、子ども食堂だんだんやロータリークラブでつながっている仲間の協力のおかげです。

虹プロの7月末までの状況は、登録世帯数が993世帯で、ひとり親世帯の割合は98%でした。配給の本格的な稼働は10月からですが、これまでに延べ5,486世帯1万2,680件の利用がありました。当初は延べ300件/年間の利用を想定していましたが、想像以上に食支援を必要とする人たちが多いことに驚きました。虹プロを実施して感じたことは、一つの組織ではできないことでも、複数が集まればいろいろな知恵や助けてくれる人たちが出てくることでした。

地域で孤立している人を食支援から様々な支援へつなげたい

大田区では2020年に3歳の子どもが食事を与えられず放置され、死亡する痛ましい事件がありました。このようなことを予防するためにも食支援を通した見守りが必要だと思います。母子生活支援施設の職員には、この活動を理解してもらいたいと考え、全職員がなんらかの活動に関わるようにしています。

この活動の合間にも、離婚相談から子どもの育て方、病気の親とその親を支える子どもの状況など多くの相談がありました。地域で気軽に相談できるようにすること、困ったときに利用できる支援があることを伝えるのも、私たちの大事な役割だと感じています。

今回、子ども食堂を通じて、地域で生活している人たちの悩みに気づくことができました。母子生活支援施設で関わる人たちは、悩みが複雑で解決をあきらめてしまう人もいます。それに対して地域の人々は、相談できる人がいないことで心の整理ができずにいたり、それでも何とか解決したいと思っている人も多いように感じました。子ども食堂の運営者は、近隣の人たちとふだん接している中で、いろいろな悩みを聞いていたようですが、これからは必要に応じて、社会福祉法人・施設や社協、行政につなぎ少しでも予防につながっていけばと考えています。

しかし、まだ誰にも悩みを相談できず、問題を抱えたまま孤立している人も多いと思います。当法人だけではできないことも、地域のさまざまな組織とつながることで、解決の糸口がみつかるかもしれません。これからも人との縁を大事に活動していきたいと思います。

 

令和4年2月14日開催「地域公益活動を考えるオンライン実践発表会」PartⅡにおいて発表いただきました内容を編集し、HP掲載時の取組状況等を追記いただきました。

発表者 社会福祉法人大洋社 常務理事 斎藤弘美氏