地域共生社会の実現に向け、“オール東京の社会福祉法人” による地域公益活動を推進します。

東京都地域公益活動推進協議会

ホーム > 各法人の取組み事例の紹介 > 社会福祉法人 福音会『子ども食堂の誕生~成熟~感染禍、5年間の展開』

このページをプリントします

社会福祉法人 福音会『子ども食堂の誕生~成熟~感染禍、5年間の展開』

社会福祉法人 福音会

【令和4年度 地域公益活動推進協議会実践報告会 表彰作品要旨】

令和4年度
東京都地域公益活動推進協議会 奨励賞
『子ども食堂の誕生~成熟~感染禍、5年間の展開』の発表要旨をご紹介します。(推進協事務局)

令和5年3月10日掲載

発表要旨

※「令和4年度 東京都地域公益活動推進協議会実践発表会」において発表いただいた内容を、事務局で編集しました。

[発表者] 社会福祉法人 福音会 軽費老人ホームA型町田愛信園 施設長 鶴田 尚子氏

シニア世代が中心となる子ども会活動を支援

 町田市は人口43万人で、年少人口は11%、高齢人口は29%です。

 当法人では、子ども食堂「ふくちゃん食堂」を運営しています。2014年から当法人の管理栄養士が、近隣施設の防災協力を得ている町内会で、年2回ほど男の料理教室を行っていたことから、入居者が参加したり、地域で当法人が役に立てる活動はないかと相談したところ、子ども会会長を紹介されました。

 当地域では3小学校の境界域にあり、かつ公立小学校の選択制度を導入していることから、近隣でも小学校が異なるため子ども同士の交わりが希薄になりがちという特性がありました。子ども会会長の話では、子ども会活動の場所の確保、活動者、資金作りに苦労があり、活動支援を依頼されました。

 当施設を開放することで子ども会役員の負担を軽減することができるのではないか、子ども会との交流で、多世代交流、食や文化継承のノウハウを得られるのではないか、一部の支援者が奔走してきた地域の子ども育成を当施設の活動に加えることで、地域住民の啓蒙となったり、地域からの支援を得られるのではないかと考えました。

 まず子ども会役員と子どもと地域の高齢者や入居者が共に参加できる企画を相談しました。この企画を法人内で諮るために各部署の代表者で地域活動委員会を発足し、人員確保や予算化を図り、継続的に展開できるようにしました。そして、たけのこ掘り、茶道教室、恵方巻作り、干し柿作りといった年4回の交流事業を実施しました。

<子ども会交流事業の様子>

 私たちはこの子ども会交流の中で、食事が大勢で楽しんで食べる機会になることを期待し、自分たちで握るおにぎりと豚汁を提供したところ、野菜が苦手な子どもでも、交流会では豚汁をたくさん食べられたという声が聞かれ、食育につながる可能性を実感しました。

 こうした子ども会活動支援の中で、子ども食堂の声が上がりました。ちょうどこの頃、町田市内の他法人による子ども食堂が立ち上がり、地域の人々にとっても子ども食堂は関心の高い状況でした。子ども会交流を3年間展開してきた法人に、地域の人々が期待を寄せてくれたことを踏まえ、子ども食堂の立ち上げに向けて模索しました。

子ども食堂「ふくちゃん食堂」を実施

 場所については、当法人施設が小高い丘の上にあり、子ども食堂の開催には不向きという点から、社会福祉協議会に相談したところ、地域の集会所を紹介されました。

 子ども食堂の開催に向けて地域の回覧板でボランティアを募集したところ、大勢の周辺住民が登録してくれました。そこで会場の集会所にボランティアに集まってもらい、開催に向けての話し合いを行いました。一方、近隣の大学でも学生ボランティアを募ったところ、ボランティア部の協力を得られました。サッカークラブ、フードドライブ、米穀店、地元企業などからも協力、賛同を得ることができました。

 回覧板で子どもの参加を募り、定員20名のところ15名余りの子どもの登録がありました。「地域の子どもは地域で育てる」というかけ声のもと、無事に子ども食堂が誕生し、今年で5年が経過しました。

 子ども食堂の会場は、一軒家です。玄関にかごを置き、地域の人々にその日の採れたて野菜などを差入れてもらっています。この野菜を使って、ボランティアがさまざまな料理を提供しています。

<子ども食堂の様子>

 入居者が食事の前に季節にちなんだ話をしたり、学生ボランティアが行事を担ってくれたりしています。レクリエーションや学習支援なども行ってきましたが、COVID-19の影響で、令和2年3月から一斉に活動が中止となりました。町田市からは休校期間は開設しないようにとの通知がありましたが、ステイホーム中の子どもたちの厳しい状況が聞こえてきたことから、手紙のやり取りをしたり、お祝いを贈ったりという交流は続けてきました。

コロナ禍で会食から弁当配布に切り替え

 休校期間終了後は、子ども家庭支援センターや市社協、保健所に相談して再開を模索しました。三密を避けられないことから会食ではなく、お弁当の配布に切り替えようとしましたが、ハードルとなったのは、保健所から営業許可を取っている厨房でしか調理が認められないことでした。そこで、弁当は当施設の厨房で作り、容器に入れて、いつもの会場に運んで配布するかたちで、子ども食堂を再開することにしました。

 令和2年5月より、再開の準備に取りかかり、クーラーバッグを用意して食品を衛生的に運べるようにしたり、使い捨ての容器やビニール袋を購入したりしました。栄養士が配食のメニューを考え、それらを踏まえて再開の1か月前に案内を送付しました。

 そして、令和2年6月より再開しました。これまでは子ども食堂に来る子どもだけが対象でしたが、弁当に変更したことで同じ家庭で食べられる子と食べられない子が出ることに鑑み、きょうだい全員に配食可能としました。その結果、希望者が55名と倍増したため、厨房の限界である60名分の配食を行うこととしました。子どもたちが家に集まり、お弁当パーティーが行われるといった展開もありました。

<再開後のふくちゃん食堂の様子>

 町田市内では16か所の子ども食堂がありますが、密になるため、なかなか会食を再開できないという悩みを抱えています。令和3年6月の法改正により配食条件が緩和されたことで配食は実施しやすくなりましたが、会食については安易には再開できない状況が続いています。それぞれの子ども食堂で、工夫しながら会食なしの居場所作りを実施しています。

 当施設では今年度中の会食の再開を検討中です。法人内の機能や資源を十分に活用し、地域パワーを生かしながら、新たなスタートを切りたいと考えています。

このページの先頭へ