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対象者の情報がない中での緊急一時保護の実践

社会福祉法人 アゼリヤ会

近隣住民より、女性の保護の依頼。情報ではひとり暮らしで何かの障がいがある方で、家はごみ屋敷で本日病院から退院したばかり。とても暮らせる状態ではないことからの依頼でした。行政の窓口が休日のため対応できない日に、当施設の職員が現場に駆けつけ、相談にのり緊急支援した事例です。

平成29年8月4日掲載

救護施設としての役割

当施設は救護施設として、セーフティーネットの機能を求められる施設であり、緊急一時保護については救護施設が取組むべき事業として示されています。

これまでは、計画的な一時入所は数多く実施していますが、緊急一時保護事業は件数も少なく、ほぼ全てが行政からの依頼による受け入れでした。しかし、このケースは、行政の窓口がお休みの日に住民からの連絡によるものでした。

 

隣町の住民からの相談に緊急に対応

日曜日の夕刻、隣町の住民より当施設に「自宅の向かいにいる女性を保護して欲しい」と連絡が入りました。理由を聞くと、その女性は本日、病院から退院してきたばかりで退院時はお兄さんが一緒だったが、お兄さんは、車で本人を自宅に送った後、すぐにどこかに帰ってしまった。女性は普段その家に一人暮らしだが、家はごみ屋敷でとても住める状態ではない。今日まで入院していた理由は、ごみ屋敷の中、寝る場所がなく階段で寝ていたところ、階段から落ち、頭部を裂傷した。

救急車で運ばれ入院し今日退院してきたところ、ひとりで泣いていて、このまま放っておくことができなかった・・・とのことでした。

隣町の住民より電話を受け、状況がわからない面がありましたが、ともかく施設職員が現場に向かうと、電話をくれた住民家族数名と、警察官がいましたが、日曜日であり役所への連絡もつかず、警察官もどのように保護していいかわからない状態でした。

ホームレスのような姿で、頭部には生々しい、傷と縫合の跡があり興奮状態で多弁でした。途中で住民からもらった、おにぎりをむさぼるように食べる姿が印象的で、本人の情報については、近隣住民などから聞くしかなく、病気などについては本人より聞く程度で十分な情報がありませんでした。

直前まで病院に入院していたことなどから、感染症などはないと判断し、施設長が受け入れを決定。。施設に受け入れ後は、夕方より本人への面接を行いました。内容を夜勤者に申し送り、迎えに行った職員が、落ち着くまで本人に付き添い、食事と着替え、その他日用品などを無償で提供しました。

 

<行政機関への連絡~精神病院への入院>休日明けに行政につなぐ

保護の翌朝、市役所の自立支援課へ報告相談。市職員がすぐに駆けつけ入院が必要と判断。病院を手配し、午前中には精神病院にお連れし、任意入院となりました。今後は自宅に戻ることは困難との判断から、施設入所に向けて、行政を中心に動いています。

 

今後に向けて

何らかの障がいがあるようで、朝まで不穏状態が続き、夜勤者が終始対応したことから、他の利用者の介護ができず支障が出たことは事実です。応援職員を手配するなどの対応が必要などの意見が出ました。

 

取組みによる成果と今後の展望

緊急性のある、行き場のない方の支援を行った今回の事例と課題を踏まえ、今後は、施設内部でも、その取組みの必要性を職員で共有して経験を蓄積し、今回のような依頼も柔軟に受け入れ、役割を果たしていきたいと考えます。

緊急受け入れの際は、どうしても通常業務に影響が出ますが、それも含めて、求められる役割とし、職員への日頃からの説明が重要と考えます。同時に、現在の施設機能では、依頼を全て受け入れることは困難なため、施設の限界と求められる役割を考えながら、感染症を含めた様々なリスクと背中合わせの緊急一時保護の受け入れをどう判断していくか、現在は明確な基準がないため、その整備が必要と感じています。

<事前に決めていた受け入れの仕組み>
費用については、予算の中“一時入所利用料が払えない方”に対する施設負担の金額を組み込んでいました。実際の受け入れの決定は、依頼内容を管理職が検討し判断することとしていました。