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東京都地域公益活動推進協議会

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施設の資源を活用しながら、住民主体の活動を支える

社会福祉法人みその福祉会 総合高齢者福祉施設ケアタウン成増(板橋区)

みその福祉会は、地域福祉の中心的存在であり続けたいと、地域の高齢者や、認知症の方、子どもたちや保護者など、誰でも気軽に来られるような施設にしようと取組んでいます。成増ランチ倶楽部をはじめ、夏場の給水ステーションの設置等、地域に根付いた社会福祉法人として、高齢者の外出のきっかけづくりや、地域住民が気軽に足を運べる施設づくりをしています。

平成28年4月13日掲載

右:社会福祉法人みその福祉会理事長 ケアタウン成増施設長 坂本寛さん
左:成増おとしより相談センター在宅支援課 課長 豊嶋ひとみさん

参加者の笑い声があふれる 成増ランチ倶楽部

みその福祉会が運営するケアタウン成増は、成増駅から徒歩10分ほどの、緑が多く、静かで落ち着いた環境の中にある、総合高齢者福祉施設です。特別養護老人ホームやデイサービスセンター、おとしより相談センター(地域包括支援センター)などがあり、高齢者の総合的な支援を行っています。毎週月曜日のお昼になると、近隣の高齢の方が集まってきます。「成増ランチ倶楽部」のメンバーです。

成増ランチ倶楽部は、高齢になり外出の機会が減った方や、日中一人で過ごすことが多い方などが、地域に出て仲間づくりをするきっかけをつくり、自主グループ化をめざして地域の支え合いを強めようと企画されたものです。

毎週月曜日の12時から13時まで、近くに住む高齢の方々が、ケアタウン成増の1階のロビーや会議室に集まり、一緒に昼食を食べながら交流しています。参加者のほとんどが80歳代です。1回500円で、施設利用者に提供しているものと同じ、栄養バランスの整った昼食が食べられます。自分たちで食事の準備や片づけをし、年末年始のスケジュールについても、自分たちで話し合って決めています。

参加者からは、「皆さんと食べると賑やかで楽しいし、いつもよりおいしく感じますよ」、「ここを知らない人がいるなんてもったいないわ」といった声が聞かれます。また、認知症の母親と一緒に参加している方からは、「お母さんは家で食べていると、食事がなかなか進まないけれど、ここに来ると食べる量が全然違う。ここまで歩いて通うことがいい運動にもなっている」と言います。

ランチ倶楽部を担当している成増相談おとしよりセンター(地域包括支援センター)在宅支援課長の豊嶋ひとみさんは「ここで出会った人同士で、別のサロンに参加してみたり、別のサロンで顔見知りになった方をここへ連れてきてくれたりすることもあります。ランチ倶楽部が、いろいろな場所に顔を出すきっかけになっている。最近はランチ倶楽部の参加者が、施設に慣れて、施設の中で自由に過ごしている姿も見られる」と話します。また、皆様に楽しんでいただくために施設内で行っている様々なイベントにも自由に参加していただいています。


食事がはじまると賑やかで、笑い声がたくさん聞こえてきます


食後、参加者の1人が、最近勉強している手話を披露


自分たちでてきぱき片づけます

職員も同じ輪に入り見守る

主におとしより相談センターの職員がランチ倶楽部に関わっていますが、休憩の時間が合えば、事務職員や、デイサービスセンター職員などが、参加者と一緒に食事をすることもあります。参加した職員は、主体的に活動している参加者の元気な姿に驚きます。「職員が急な用事で開始時間に間に合わない時でも、参加者だけで活動を始めているくらいです。手を出し過ぎないことがポイント。まだ参加した事のない職員にも伝えたい」と豊嶋さんは話します。

職員は同じ輪に入りながら、自然に関わります。例えば、参加者同士が言い合いになってしまったときには、そっと間に入り、言葉をかけます。参加者中心の活動になるよう、職員が仕切るのではなく、アドバイスをするようにしています。そのようにして、職員が裏方に回ってはたらきかけ、黒子のような役割をすることで、住民が主体の活動を支えています。

社協のサロンに登録し、活動を継続

成増ランチ倶楽部は、試行期間を経て、平成26年9から活動を開始しました。はじめの3か月は区の介護予防事業の一次予防事業として実施し、物品購入や区の職員のフォローがありました。その後も、続けたいというニーズがあったため、自主グループとしてサロン化しました。現在では板橋区社会福祉協議会の福祉の森サロンに登録しています。福祉の森サロンは、区内で「誰もが気軽に参加できるサロン活動」を自主的、主体的に行っているグループが登録できるもので、社協の支援を受けることができます。

ケアタウン成増がすでに持っている資源を活用することで、(1)利用者と同じ食事が提供可能、(2)定期的に利用できる場所の提供が可能、(3)手を洗う場所や、衛生的な机などの提供が可能です。

二次予防事業終了時の面談で声をかけたり、金銭的な理由でデイサービスの利用をやめて閉じこもり気味な方を誘うなど、職員が気になる方の所へ出むき、「気軽に来てみませんか」と参加をはたらきかけられるのが魅力です。

参加者も少しずつ増え、最近では活動日を増やすことについても検討しています。「今はだいたい参加者主体で活動できている。職員の負担感も少ないし、施設の資源を活用してできるので、活動日が増えたとしても無理なく続けられる」と豊嶋さんは話します。

また、公民館や集会所でのサロンよりも、高齢者施設で行うことにより、職員が関わることができ、地域の高齢者の情報を得ることや、必要な情報を伝えることができています。

高齢者に限らず、誰でも気軽に来てほしい

ケアタウン成増のロビーには、小学校の子どもたちの工作や絵を展示しています。施設のロビーに展示することで、作品を作った子どもと親が、施設に足を運んでくれます。そのほかにも、介護予防の取組みなどを行っている市民団体を積極的に招いたり、近隣施設と町会で締結した災害支援協定に基づき、行政、消防署、地域住民とともに防災訓練も行っています。夏場の給水ステーションは、散歩の途中の水分補給として誰でも利用できます。認知症カフェも月に1回開催しています。

それらの取組みは、閉じこもりがちな方や、地域とのつながりがない方の外出のきっかけになってほしいという思いからはじまりました。社会福祉法人みその福祉会理事長の坂本寛さんは「地域の方が施設に入ってきてくれることは、職員にとってもよい刺激になる」と話します。

豊嶋さんは、「ケアタウン成増の存在は知っているけど、入ったことはないという人に、中に入ってきてほしい。何かのきっかけで来てもらって、そこから地域での活動を広げていって欲しい。顔見知りが増えれば、私ももっと他のサロンに顔を出しやすいし、サロンの困り事や個人的な困り事などにも対応できる可能性があると思う。人との関わりも地域に発展していって欲しい」と話します。


デイサービス利用者の作品と、小学生の作品を一緒に展示


この日、施設内で開催されていた
「スポーツ吹き矢の体験会」で
ランチ倶楽部の参加者もチャレンジ

 

職員がもっと外へ出る

現在の課題は、このような取組みを知らない方への情報発信と、集まりが苦手な方や、行きたいけど行けないという方にも参加してもらえるようにすることです。豊嶋さんは、「待っているだけではなく、施設側が地域に出向いていくことが大切。ニーズがあれば、おとしより相談センター以外の職員にも外に出て行ってもらい、専門職としてできることをやっていきたい」と話します。

今後も、様々な取組みを通して、ケアタウン成増が、高齢者に限らず、地域の人にとってもっと身近な存在になっていくことが期待されます。みその福祉会は、地域福祉の中心的な存在として、これからも住民が住み慣れた場所でいきいきと過ごせるよう、地域に開けた法人づくりをめざしています。


ケアタウン成増

 

社会福祉法人みその福祉会

〒175-0094 東京都板橋区成増4-14-18
ケアタウン成増 Tel 03-3939-0763
成増おとしより相談センター 03-3939-0678

http://misono-fukushikai.or.jp/

平成12年3月8日設立。
特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、ホームヘルプサービス、居宅介護支援事業、成増おとしより相談センター(成増地域包括支援センター)を運営。
法人運営理念は、(1)利用者様の尊厳のある生活を支援します(2)利用者様本位のサービスを提供します(3)利用者様に家庭的でゆとりのあるサービスを利用して頂きます(4)利用者様一人ひとりに合った質の高いサービスを提供します(5)常に地域に開かれ、地域福祉の中心的存在であります、としている。
地域の幼稚園、小中学校、ボーイ・ガールスカウト、民生委員や様々なボランティア団体等とも交流を積極的に行っている。