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東京都地域公益活動推進協議会

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『せたがや公益協での「食」を介した相談支援の拡充に向けた取組み』について

世田谷区社会福祉法人地域公益活動協議会(せたがや公益協)

【令和4年度 地域公益活動推進協議会実践発表会 表彰作品要旨】

令和4年度 東京都地域公益活動推進協議会 会長賞
『せたがや公益協での「食」を介した相談支援の拡充に向けた取組みについて ~ 社会福祉法人の強みを生かした相談支援型フードパントリー設置へ~』の発表要旨をご紹介します。(推進協事務局)

令和5年2月24日掲載

発表要旨

※「令和4年度 東京都地域公益活動推進協議会実践発表会」において発表いただいた内容を、事務局で編集しました。

【発表1】

[発表者] 世田谷区社会福祉協議会 連携推進課 連携推進係 遠藤 慧 氏

 

コロナ禍での地域課題は孤立と困窮

世田谷区社会福祉法人地域公益活動協議会(以下、「公益協」という。)は、平成28年度に発足しました。区内に本部のある36法人が参加し、公益協となりました。世田谷区は人口90万人を超える大きな自治体なので、区内全体で地域公益活動を考えるのではなく、5地域に分けて連絡会を開催しています。

地域課題を地域公益活動につなげていますが、コロナ禍での課題は、孤立と困窮でした。生活福祉資金特例貸付の申請件数は4万5,000件を超え、区内の社会福祉法人と共に改善に向けた取組みを行うため、支援対象者の把握、就労支援などの支援方法の拡充について、昨年度より公益協で検討してきました。その中で、「『食』をつなげるきっかけにする」「社会福祉法人のソーシャルワーク機能を活用する」をキーワードに、何ができるかを検討し、取り組んできました。

 

相談支援型フードパントリーの試行から拡充へ

令和3年度の取組みとして、相談支援型フードパントリーを試行しました。70歳以上の生活福祉資金特例貸付利用者の381世帯を対象に、食品配付を案内し、取りに来た人々にアセスメントを行い、困りごとや心配ごとに合わせた支援につなげました。

こうした取組みにあたり、最大の課題は、身近な配付場所を確保することでした。食品が必要でも取りに行けない人も多く、できるだけ対象者の身近な場所で配付したいと考え、社会福祉法人に加え、社協、区、企業などに配付場所を提供してもらい、区内23か所に配付拠点を設置しました。

相談支援型フードパントリーでは、社会福祉法人が運営する地域包括支援センターの職員が、食品を渡したりアセスメントを行ったりしましたが、経済的な困窮だけではなく、何か月も会話をしていない、人と話せる場所に行きたいといった声が聞かれ、介護保険申請の相談につなげるニーズも見えてきました。

<相談支援型フードパントリーの様子>

<千歳敬心苑>               <友愛十字会>

この試行を踏まえ、令和4年度には、食支援のさらなる拡充に取り組んでいます。課題として、食品の保管場所の確保、フードパントリーをはじめとした相談支援場所の確保、集めた食品を支援場所に届ける物流体制の確保、食品の確保といったことが出てきました。これらの取り組みを区内36法人での役割分担をイメージしながら、食支援体制の拡充を進めています。

まず、物流体制の確保については、デイサービス等で各社会福祉法人が使用している車両の空き時間を活用し、法人が所在する地域内でこれから立ち上げる相談支援型フードパントリーへの持ち込みや、子ども食堂を始めとした食を介した活動団体に食品を運ぶ「地域内フードキャリー」に参加する法人を募っています。

食品の確保に対する取組みは、法人職員や法人事業の利用者、その家族等を対象に、家庭で使われていない食品の回収する、「法人フードドライブ」を行う法人を募っています。また、フードパントリーでは常に米や麺類などの主食が必要になるため、カンパでお金を集めて主食を購入し、パントリーへ寄付する取組みも拡充していきたいと考えています。

常設の相談支援型フードパントリーの設置については、①法人の地域公益活動に位置づけた主体的な取り組み、②地域別連絡会に参画する他法人が保管・運搬・食品確保といった役割を担うバックアップ体制作り、③社協内の関連部署との協働体制作り、という3つのコンセプトを元に検討を進めています。各地域1か所の新設に向けて、現在4法人と検討を開始しています。

 

【発表2】

相談支援型フードパントリー常設を目指して

[発表者] 社会福祉法人 奉優会 特別養護老人ホーム 等々力の家 施設長 石井 りな 氏
 

高齢者を対象に相談支援型フードパントリーの常設を検討

当施設は世田谷区玉川地域に位置する特別養護老人ホームで、ショートステイ、デイサービス、居宅介護支援事業所、訪問介護ステーションを併設しています。2001年にオープンし、今年で22年目となります。地域では、近隣の大学や高校、中学校、そして自治会である町会等と連携しながら、さまざまなイベントに取り組んできました。

玉川地域社会福祉協議会事務所と連携して、2020年7月には「食で応援プロジェクト」と題して、子ども食堂の食材集めを実施。2021年12月には生活困窮者に向けてお米の配布等を行いました。これまでの取組みを通じて、支援は一時的なものではなく、継続が必要であると感じています。

<食で応援プロジェクト、お米・不織布マスクの配布の様子>

等々力の家でこれまで培ってきた地域との絆を生かし、支援を必要とする人々に継続した支援を実施するため、世田谷区社会福祉協議会と共に相談支援型フードパントリーの常設に向けて動き出しました。

常設に向けた課題は、対象者、人員の確保、運営方法の検討、食材集め、情報発信と広報の5つです。対象者は、支援を必要するのは、子どもや一人親世帯、障害をお持ちの方など多岐にわたります。目指すところは支援を必要とする人すべてに支援が届くようにすることですが、まずは地域で暮らす高齢者を対象とし、徐々に支援の場を広げていきたいと考えています。

人員の確保については、介護職員や相談員が日常業務との両立を図るのはもちろんですが、当施設のボランティア、利用者の家族といった地域の力をこれまで以上にお借りしたいと考えています。

<フードパントリーの常設に向けた5つの課題>

食べること、それは生きる源となります。食の支援の継続は、住み慣れた街でその人らしく暮らすことを地域で支えることにつながります。世田谷区社会福祉協議会や他の社会福祉法人と連携しながら、当施設が地域福祉の拠点となるべく、常設型フードパントリーの実現に向けて、これからも取り組んでいきたいと考えています。

令和4年度東京都地域公益活動推進協議会実践発表会において発表いただいた内容を編集しました。

 

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