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東京都地域公益活動推進協議会

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認可保育園が地域の国際化に貢献!保育園が地域のハブになる。

社会福祉法人つぼみ会 LIFE SCHOOL 桐ケ丘こどものもり

日本に住んでいる外国にルーツのある方々は様々な悩みを抱えています。地域に住むみんなが助け合い、支え合えたら!という思いで、お困りの方が専門職とつながることで、地域住民にとっての居場所づくりに取り組んでいます。

【令和5年度地域課題に取り組むための助成事業 助成法人】

令和6年3月19日掲載

この取組みは、当協議会が実施する「令和5年度地域課題に取り組むための助成事業」にて、活動経費の一部を助成させていただきました。

 

国際色豊かな地域と園

東京都北区、JR赤羽駅から徒歩15分ほどのこの地域には、東京23区内ということを感じさせないような大きな公園もあり、この地域で子育てをするご家庭も多くいます。それと同時に、この地域の大半は都営住宅で、地域の多国籍化が加速しています。当園は在籍105名の内23名が外国にルーツのある子どもたちで、その割合は約20%と北区内でも高い数値となっています。なかでもバングラデシュやネパールなど南アジア諸国にルーツのあるかたが多くいます。外国にルーツのある子どもたちを預かるにあたって、文化、言語はもちろん、宗教という点においても配慮が必要です。23名の外国にルーツがある子どものうち15名がムスリムのご家庭で、その方がたにとって日本での食事は神経質なものとなります。酒類や豚肉など、イスラム教では食べることが許されていない食材や調味料が日本では一般的に使用されているからです。そのため当園では、調理室のハラル認証を取得し、ハラルフードの給食を提供しています。ハラルとはイスラム教の教えにおいて「許された」という意味のアラビア語であり、ハラル認証を取得するということはムスリムの方がたにとって口にしても安心安全であるということを意味しています。こうしたさまざまな文化的、宗教的な背景のある子どもたちを受け入れる体制を整備することで保護者も園運営に対して非常に好意的で協力的な関係を結ぶことができています。

 

「TOMONI」 発足の経緯と流れ

私たちが保育園を運営している桐ケ丘地域には、多くの外国籍のかたが暮らしています。そんななか、園の近くにある東洋大学の先生から、地域の外国にルーツのある方がたが子育てでの言語の壁、文化や宗教の違いでさまざまなことに困っているようだという話を耳にしました。そこから、北区社会福祉協議会で地域のコミュニティソーシャルワーカー(以下、CSW)の方と、地域のバングラデシュ人コミュニティのリーダー的存在のカシェム氏と地元住民の方がたと共に、ミーティングの場を設けることになりました。そこではそれぞれが抱える多様な課題や悩みが出て来ました。カシェム氏からは、地域との繋がりの希薄さ、ことばや宗教の違いから起こる学校や園での問題、ビザに関する法律的なものまで多岐に渡りました。地域住民からは、ことばの壁があるため、サポートしたくてもそれがむずかしいということ。園としては、ことばの壁による普段の保護者とのコミュニケーションや入園の手続きの困難さなどを報告しました。互いの悩みや困りごとを解決するために「TOMONI」は動き出します。

 

他機関とつながるきっかけ

「TOMONI」の立ち上げには、地域のCSWにさまざまな場面でお力を拝借しました。CSWは、いってしまえば地域支え合いのプロフェッショナル。そこで私たちと同じように、地域の外国籍の方がたの力になりたい! という仲間を多数紹介していただきました。たとえば、東京パブリック法律事務所の皆さま、JET日本語学校の校長先生をはじめとする地域の専門的な機関です。それぞれ、外国籍の方がたや地域に何か貢献できないかと思っていた皆さまです。困っている人の力になりたいと思いそのための間口を開いていても、実際にドアをノックしてもらうことができなければ何の力にもなることができないという歯痒さを、地域の保育園にみんなが集まることで解決しました。また「TOMONI」にとっても、専門的な皆さまの力を借りることは大きく、園や地域住民だけでは対応がむずかしい言語や法律関係の不安も対応ができるようになり、外国籍の皆さまにとって頼れる存在になれたと考えています。カシェム氏に共有いただいた悩みも網羅できるよう、次の5つが「TOMONI」の主な内容です

① お手紙サポート

小学校や保育園など、子どもたちが通う機関から発行された手紙等で内容が分からず困っていたものを持ち寄り、内容理解を助けるための活動です。日本語が堪能なかたに、母語で伝えてもらっています。手紙内容を理解したときの表情は、喜びに満ちています。

② 日本語支援

日本語を話したり、読み書きしたりできるようになりたいかたのための無料出張日本語教室を実施しています。JET日本語学校の校長先生や卒業生に来ていただき日本語を教えてもらっています。日本語を少し学んだ方がたは「もっと学びたい!」と意欲を高めています。

③ 法律支援

東京パブリック法律事務所の皆さまや、地域にお住まいの行政書士による法律関係の問題の相談窓口です。複雑なビザに関する相談などが受けられます。こういった専門の方がたのバックアップがあることで、安心して日本で生活を送ることができるという声をいただいています。

④ 地域交流

地域住民と交流するための場です。外国籍の皆さまはことばの壁など、さまざまな障害の影響で地域との交流やつながりが希薄になりがちです。この場では、地域のイベントの情報交換からその日の夜ご飯のおかずまで、さまざまな情報交換がなされています。ことばや文化が違う国でも地域住民とつながることができ、孤独感が減ったとの声も聞こえてきています。

⑤ 子どものあそび場

これまで紹介した①〜④の場を外国籍の皆さまが利用している間、その子どもたちはこのあそび場で過ごします。このあそび場を企画、運営してくれているのは東洋大学の学生の皆さまです。子どもたちが楽しめる制作活動やゲームを企画し、あそびを見守っています。そうすることでそれぞれの希望に応じた相談や支援を受けることができます。

 

地域の皆さまにとって

「ハブになりたい」

さまざまな専門機関の皆さまが居てくれて「TOMONI」は成り立っています。このほかにも、高齢者の皆さまや不登校の子どもたちの居場所、外国にルーツのある皆さまの常駐の相談場所などの情報を翻訳して提供しています。保育園という地域の多くの方がたの目に留まるという立場を利用し、こういった方がたをつなぐハブになりたいと考えています。“保育園が地域の国際化に貢献”というと一見大それたテーマに思えるかもしれませんが、私たちが行っていることは“助け合い”です。

毎月第4日曜日のTOMONIに来てもらい、地域との交流の機会をつくる。その場では私たちの園運営の相談にも乗ってもらっています。外国にルーツのある子どもたちを預かるなかで文化や言語の違いから起こる悩みや課題もたくさんあります。そんなときには、外国籍の皆さまの力を借りて一緒に解決します。

よりよく暮らしたい、みんなと仲良く暮らしていたい。そんな思いはみんな一緒。保育園がそんなみんなの思いをハブに寄せてつなぐ。LIFESCHOOLに来たらいつだって友だちが居る。そんな地域の園になりたいと思っています。

 

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